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【読書ノート】『霊感!』
『霊感!』
夢野久作著
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パーポン医師のもとにやってきたあごを外した青年が、レミヤという美人娘と彼女の夫になるために競い合う双子の物語を語る。レミヤの両親は亡くなり、レミヤの従妹であるアルマとマチラの間で選択を迫られる。ところが、双子は容姿と性格が瓜二つで区別がつきがない。名裁判官のウイグ氏は、この問題を解決するために親子の鑑別法を研究し、彼は関係者を集め、霊感による方法を提案する。その結果、赤ん坊はどちらの場合も泣いてしまい。別に父親が存在していたことが、判明する。という話。
①"顎が外れる"ことの意味は?
一つには、コミュニケーションや表現の制約を象徴する。顎が機能しないという身体的制約は、自己の思想や感情を他者に伝える能力が制限されるというメタファーとなる。また、それは人間の脆弱性や身体の不完全性を強調する事例とも言える。さらには、人間の控えめさや内省的な性格を象徴する。したがって、顎が外れるという事象は、自己表現、脆弱性、内面性などを含む多くの哲学的テーマに結びつけることができる。
②"双子"
一般的には「同一性」と「個別性」の間の緊張、人間のアイデンティティの概念、そして自己と他者との関係性を象徴する。彼らは、個々が独自の個性と経験を持ちながらも、物理的特徴や遺伝的背景において非常に似ているという独特の状況にある。これは、自我の本質、自己認識、そして個体と集団の間の関係について考えるきっかけを提供する。
③"霊感"
「直観」、「啓示」、または「高次の認識」を象徴する。これは論理的推論や物質的証拠を超えた知識や理解を得る経験を指し、人間の思考や認識の範囲を示す。
物語の主題は何か?
双子の兄弟の苦悩から、「自己」とは、何か?の概念についての洞察を提供する。
その次に、赤ん坊が本当の父親を認識するエピソードは、生物学的な絆と社会的な関係性の複雑さ、親子関係の本質について考察させられる。
裁判官の研究と霊感による真実探求からは、真実に辿り着くための方法として、霊感という超自然的なアプローチが妥当だと考える、人間の限界を考えさせられる。