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【読書ノート】「星の子」

『星の子 (朝日文庫)』
今村夏子著


芦田愛菜の「信じるとは」の発言でも話題なっていた映画の原作。

信仰の問題、教育、家族、子供の成長など、いろいろテーマが散りばめられていてなかなか考えさせられた。

日本では、宗教や信仰を持たないことが普通だと思わされているけれど、世界的にというか、西洋社会からすると、信仰する神的なものを持たない人間は野生動物と変わらないと思われてしまう。共産主義だとか、危険思想の持ち主と同じレベルに見られることが、わかっていない。

本書に書かれているような水を用いた儀式が本当にあるのかどうかはわからないけれど、キリスト教でも洗礼式といって、水を体に掛けたり、教会堂にある水槽に全身を浸らせるような式典がある。

教師が、あまりにも無知であること、人間としてあまりにも未熟であること、それに対して、信仰心のある両親には、愛がある。

夜中に頭に聖水を掛けるという、一般常識的に奇行を当たり前のように行う両親に対して、一般常識に照らし、複雑な思いが湧き上がる主人公。

信仰のことは、さておき、自分の親のことは、信頼する。一方、正しい人であるはずの学校の先生は、信頼できる存在ではないことにも気づいていく。

主人公のちひろは、冷静に成長していく、日本ならではの、社会問題が、濃縮していると思った。

日本の産業の父と言われている渋沢栄一は、西洋社会のキリスト教に対して、日本人には、「論語」があると言って、論語に基づいた産業育成を進めたのだけど。世界大戦を経て、「神」的なものへの信仰を否定する方向になってしまい、「論語」的な正しさがよしとされてしまうと本書に出てくる人間的に極めて未熟な教師が、蔓延ってしまうように思った。

神様への信仰心というものが、もっと必要なのではないか?と、思っている。たしかに、巷には、訳のわからない「あやしい宗教法人」は存在しているが、ちゃんとした教会もあるのだから。

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