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【読書記録】『彼女は頭が悪いから』
『彼女は頭が悪いから』
姫野カオルコ著
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東大の男子5人組が、ひとりの女子大生を全裸にして、平手で叩いたり、蹴ったり、肛門に割箸を刺してドライヤーで性器に熱風を浴びせたりした。でも、レイプはしていない。
判決後も、加害者は形式だけ反省したことにして、自分たちが(彼らの親も含めて)やったことに対して全く悪いと思っていないことが酷く現実的な話だと思わされた。
物語の主題は何か?
論点が沢山あって絞り込むのはなかなか難しいのだけど、まず、あげるべきことは、東大を筆頭とした偏差値による階級社会・分断社会の現実が示されているのだと理解した。
東大と聞くと、どの業界でも、一目置かれる社会だ。官僚も、大企業も幹部には東大卒が多い。
東大に入れた人間は、努力をして、受験戦争を勝ち抜いてきたのであって、東大に入れなかった人間は努力をせず怠けていたと本気で思っているのかもしれない。
努力をするかしないかが運命の分かれ目だって言われて育った記憶もある。
そして、「努力は報われる」ともよく聞く。これは、一面正しいのだけど、現実は、努力しても報われないことの方が、多いと私は思ってしまう。ただ、それは、自分に向いていないことで、努力しようとするから報われないのであって、人間はそれぞれ何らかの才能が与えられているはずで、それは必ずしも学校で学べるものとは限らない。
人間の幸せってだいたい、偶然の積み重ねでできているというのは、私の感覚なのだけど、今ある幸せというものは、天からの恵みでしかないように思ってしまう。
日本は文化水準が、欧米より、20〜30年遅れている状況は変わっていないのだろう。今のアメリカの分断社会の状況は、20年後の日本の状況かもしれない。
他にも論点は沢山あるのだけどまとまらないので割愛する。
物語の最後で著者が語る、
「彼らにあったのは、ただ「東大ではない人間を馬鹿にしたい欲」だけだった。」
という言葉が、象徴的だった。
実話にも基づいているわけで、衝撃的な物語だなあと思った。