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【読書記録】『巡礼者たちはなぜ帰らない』(『わたしたちが光の速さで進めないなら』より)
『巡礼者たちはなぜ帰らない』(『わたしたちが光の速さで進めないなら』より)
キム・チョヨプ著
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韓国のベストセラー短編集。
カテゴリーは、SFに分類されているのだけど、SFの枠を超えて「生きるとは?」とか、「愛するとは?」といった普遍的なテーマも物語が多い。
デイジーは、この平和な世界(ユートピア)を創ったとされる伝説上の人物であるリリーとオリーブについて、学んでみたいと考えた。成人式を終えないと入れない「禁書のエリア」に入って、封印されている過去を紐解いていく。
伝説上のリリーとは、遺伝子操作で、「新人類」と呼ばれる美しくて、能力の高い欠点のない人種を作り上げて、地球をユートピアにしようとした人物。ところが、現実は、新人類と未改造人間が混在する、デストピアのような地球を作ってしまった。そこで、地球から離れた土地に密かに、平和だけを愛する種族が住むユートピアを創った。このユートピアでは、18才になると成人式の一環で、「始まりの地」(地球)を巡礼させる。送り込まれた若者たちの全員がユートピアに戻って来れるわけではない。
物語の主題は何か?
ひとが快適に生きていく上で、必要なものは、美しさとか能力の高さも大切なもので、特に大事なのは平和を求める心。それらが備わっていれば、そこは、ユートピアなのか?ってことなのだろう。
巡礼した若者の半分くらいは、ユートピアに戻って来ない。冒険心であったり、愛であったり、何か変化を求める心だったりするのだろう。
物事すべてに、二面性があるということなのだと理解した。
愛があれば、憎しみもあるということなのだろう。
短編ながら、なかなか盛りだくさんで興味を惹かれた。アニメとか映画化されても良さそうな印象を受けた。
https://music.apple.com/jp/album/earth-is-flat/1777012727?i=1777012728