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【読書ノート】『三月の毛糸』(「愛の夢とか』より)

『三月の毛糸』(「愛の夢とか』より)
川上未映子著


妊娠8か月の主人公が、夫と京都を訪れた際に、毛糸でできた世界を夢見るところから始まる。3月までが毛糸でできていて、ほどけていくという。

キーワードを挙げてみる。

①「毛糸」
毛糸の特性であるほどけやすさは、時間の経過や破壊のプロセスを象徴する。「毛糸」は人生の喜びや苦難、不確実性、そして変化の本質を表す。また、毛糸のほどける様子は、楽しい時間が短く感じられる一方で、困難な時間が長く感じられるという人間の感覚や経験を表現している。

②「妊娠と震災」

1. 変化と不確実性:妊娠や震災は、人生における大きな変化と不確実性をもたらす。妊娠は新しい生命の始まりであり、家族や個人の未来に重要な変化をもたらす。震災は地域や社会の状況を一変させ、生活や環境に大きな不確実性をもたらす。

2. 脆さと強さ:妊娠や震災は、人間の脆さと同時に強さを浮き彫りにする。妊娠は身体的・感情的にも大きな負担を伴い、困難な状況に直面することもあるが、同時に母親の強さや親としての責任感を引き出す。震災も人々に対して困難や苦難をもたらしますが、その中で人々は助け合い、回復と再建を目指すために自らの強さを発揮する。

3. 希望と再生:妊娠や震災には希望と再生の要素がある。妊娠は新しい命の誕生や家族の成長、未来への期待を象徴する。震災の後には地域や社会が再生し、困難を乗り越えて新たな希望が生まれる可能性がある。

キーワードからみえてくること。

妊娠や震災は人間の存在や喜び、苦しみ、希望、強さ、不確実性などの根源的なテーマを浮き彫りにする。また、妊娠と震災は人間の存在や自然の摂理との関連性を考えさせ、人間の経験や人間性の多様性を示すものでもある。

物語の主題は何か?
生きているものは常に変化の過程にあるということ。

以下は、古代ローマの哲学者セネカの言葉。

「万物が巡って移り変わる様子を見れば、この宇宙には消えてなくなるものなど存在せず、すべてが栄枯盛衰を繰り返していることがわかるだろう。滅びるとおもっているものは、どれも実際には「変化」しているだけにすぎない。我々もこの世にふたたび戻ってくるのだから堂々と立ち去ればよいのだ。」

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