【読書ノート】『幻夜』
『幻夜』
東野圭吾著
『白夜行』の姉妹作と言われる。
非常に魅力的な女性新海美冬。
秘められた悲惨な彼女の過去の生い立ちから、美冬は常に愛に飢えている。彼女が求める愛は、命をかけた献身。
物語は、阪神大震災直後に、水原雅也が、叔父を殺す現場を新海美冬が、目撃するところから始まる。
見た目の美しさもあるのだろうけど、美冬は心理的に男たちに迫る。狙われた男は皆、美冬に陶酔してしまう。ペットを飼うように、男たちを躾けていく。
ときに、自分の飢えた愛を示して、男たちに忠誠を誓わせる。ご褒美を示して、美冬の望みを叶えさせる。
ひとは、嘘だと思っても、愛の言葉を向けられると愛を求めてしまうのだなあ。
美冬のためであるのなら、殺人ですら、起こしてしまう。
雅也は、美冬の真実に気づき、彼女を殺して自分も死のうと決死の覚悟で、彼女に迫る。
物語の主題は何か?
かなりの分量の長編なので、色々なテーマが、散りばめられているのだけど、善悪の二元論や人間の欲望と道徳の対立、個人の目的や幸福の追求と社会的な義務との関係などの哲学的な問いが浮かび上がる。また、物語の展開や登場人物の行動を通じて、宿命や運命の存在、偶然と必然の関係についても考えさせられる。
愛と喪失、人間関係の複雑さ、時間との闘い、死と永遠性といったテーマは、心に響く。
いま、子犬を飼い始めていて、
たくさんの愛情を注ぎながら、子犬も100パーセントの愛を示してくる。そんな中で、躾けをするのだけど、その手順は新海美冬だなあと思ったりした。
ドラマも見たのだけど、原作よりも、新海美冬が、わかりやすい悪女風に作られていたように思った。
ドラマ化されて間もなく、東日本大震災が起こったというのも、怖いなあと思った。