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【読書ノート】『滅びの前のシャングリラ』

『滅びの前のシャングリラ』
凪良ゆう著


一ヶ月後に小惑星が地球に衝突する。9割の人々は消滅するのだと言う。

登場人物は、いじめられっ子の友樹、ひとを殺めたヤクザの信士(友樹の父)、静香(友樹の母)、雪絵(医者の家庭に養子された少女)、売れっ子シンガーの山田路子(Loco)。それぞれが、辛い日々を嘆いて過ごしている中、一ヶ月後に地球が滅亡するというニュースを聞く。

人生は有限だと言うことを突きつけられ、それぞれが自分の人生を振り返る。そして、人類最後の日を迎える。

キーワードを挙げてみる。

①シャングリラ
1. 理想的な社会や生活の象徴であり、多くの場合、現実の厳しさや不完全さと対比される。

2.内面的な平和や自己実現の象徴でもある。個人が内面的な成長を遂げることが、真の幸福や満足感に繋がるという考え方を示す。

3. 存在の本質についての問いを投げかけ、人生の意味や目的を意識させる。

4. 調和の取れた共同体を象徴し、人々が共に生きる理想的な形を示す。

②パーフェクトワールド
1. 現実世界の不完全さや矛盾と対照的に、理想的な状態を示す。理想の追求とその実現の難しさについての深い考察を促し、人間の欲望や限界についての洞察を与える。

2. 完璧な世界は、倫理的な基準や道徳的価値が完全に実現されている状態を表す。この視点からは、善悪の概念や正義、倫理的行動についての議論が展開される。

3. 個人の幸福と社会全体の調和が共存する理想的な状態を示唆する。個々の自由と社会的責任とのバランスが問われる。

③エルドラド
1. 完璧な社会や無限の富を求める人間の欲望の象徴。人間は何を求め、何を犠牲にしてまでそれを追い求めるのかという問いが浮かび上がる。

2. エルドラドはしばしば幻影として描かれ、実際には存在しない理想の世界を指す。

3. エルドラドを探求する過程は、単なる物質的な富の獲得を超えて、自己発見や成長の旅として捉えられる。探求そのものが価値を持つという観点から、人生の目的や意味についての重要な議論が生まれる。

4. エルドラドは、特定の文化や時代における価値観や理想を反映している。

④いまわのきわ
1. **死の受容**: 「いまわのきわ」は、人生の終わりや死に直面する瞬間を示す。この瞬間は、死という不可避の現実を受け入れることの重要性を強調し、人生の有限性や儚さについて深く考えさせられる。

2. **存在の意味**: 人が最期の瞬間を迎える際、これまでの人生や存在の意味を問い直す。この視点からは、自己のアイデンティティや人生の目的についての反省が促され、人間が存在する意義が問われる。

3. 過去や未来に思いを馳せることができる中で、現在の瞬間をどのように生きるべきかが問われる。

4. 最期の瞬間は、家族や友人との関係、愛情や後悔についての深い感情を引き起こす。これにより、人間関係の重要性や、他者とのつながりについての考察が深化される。

物語の主題は何か?
すべての人々にはそれぞれ理想や夢、希望がある。それを意識しているかどうかは別として、夢を実現しようと人生を送っているべきなのだろうけど、現実は、人々の欲望がぶつかり合って、勝者と敗者が出てくる。

勝者になってみても、それは、自分の思い描く理想とは程遠いことに思い悩む。

ひとは死ぬものだということはわかっているものだけど、根本的なところで、自分が死ぬことは具体的にはなかなか認知出来ない。
いつかは死ぬのだけど、明日死ぬとは思えないわけで、終わりを意識出来ない限り、ひとは理想を求めてしまい、それが、逆に不幸をもたらしているのかもしれないと思った。

古代ローマの哲学者セネカの言葉を思い出した。

「よき人間とは、自分がいきたいだけいきるのではなく、自分が生きる必要があるだけ生きるものだ」

所詮ひとは生かされているに過ぎないわけで、与えられているものに日々感謝して自分の使命を模索していくと言うことなのだろうとか思ったりした。

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