『ぎょらん』
『ぎょらん』
町田その子著(短編集「ぎょらん」より、同じタイトルの作品)
主人公、華子は、不細工らしいのだけど、美袋(みなぎ)さんという職場の既婚の上司と不倫をしていた。ある日、美袋は、バイクの事故で亡くなってしまった。そのお通夜から、帰宅したところから物語は、始まる。
美袋は、不倫をしていて、どうやら、バイクで、不倫相手に会いに行く途中、事故に遭い、そのまま、帰らぬ人になった。
華子は、特に約束をしていなかったので、美袋は、華子ではない別の女(華子の後輩なのだけど)と不倫をしていたということだった。というより、その後輩の方が、不倫相手としては、本命?だったのかも知れない。
そんな、やり切れない思いをしている華子の様子に気づいたのが、弟の朱鷺(とき)。事情があって引きこもり生活をしている三十路のニート。
朱鷺は華子に「ぎょらん」の話をする。人が亡くなって、成仏していない間、死ぬ直前に抱いていた「想い」が、赤い玉として、亡くなった場所に転がっているのだ。その見た目から「ぎょらん(魚卵)」と言われている。その、ぎょらんを食べる(噛む)と、亡くなったその人の想いが、わかるのだという。
"ぎよらん"って何だ?魚卵のようだから、"ぎょらん"らしいので、
魚卵にはどんな意味があるのか、考えてみた。
* 再生と連続性:魚卵は、生命の連続性や再生のシンボル。
* 道徳的な象徴:魚卵は節制や道徳的な行動の象徴とされる。魚卵は小さな存在でありながら、未来への希望や責任を内包していることから、倹約や持続可能性などの美徳を表現する。
そして、卵を噛むことにはどんな意味が、あるだろうか?
* 享受と感謝:卵を噛むことは、食べ物を楽しむことや享受することの象徴。卵は栄養豊富であり、噛むことによってその味や食感を堪能し、食べ物への感謝や喜びを表現することができる。
* 経験と理解:卵を噛むことは、何か新しいことや未知のものに対する経験や理解を意味する。卵を噛むことで、その内部を知り、真の価値や本質を理解しようとする意志を表現する。
* 決断と成長:卵を噛むことは、新たな挑戦や変化に対する決断を意味する。卵は孵化する前の未成熟な状態を象徴し、それを噛むことは変化や成長への一歩を踏むことを表している。卵を噛むことで、困難や未知の世界に立ち向かい、進化や発展を追求する意志が、示される。
こうしてみると、物語のテーマは、恋人だと思っていた男に、死なれてしまって、失意の中にある姉華子を何とか立ち直らせようと頑張った弟朱鷺の姉弟愛ってことなのだと理解した。
亡くなってしまった人の本心を確認したいと思ってしまう。そんなことをしてもしょうがないだろうに、それをわかった上で、弟の朱鷺は、華子を連れ出して、事故現場に向かう。そして、現場で、朱鷺は、ぎょらんを見つけ、口に入れて噛み砕く。
生かされているものは、幸せに生きる道を模索していくしかないのだろうということに尽きる。
まあ、不倫は、ダメでしょうやっぱりとは、思うのだけどね。