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本を読む。珈琲を飲む。

目次

  • 書き出し展覧会

  • ドトール


書き出し展覧会

きょう、ママンが死んだ。

異邦人/カミュ

本は書き出しが重要だ。

読者が初めて作者の文章に触れるのはその僅かな数行だからだ。

著者のファンでもない限り、何ページも惹かれない文章を読み続けるとは考え難い。

エレベーターはきわめて緩慢な速度で上昇をつづけていた。
おそらくエレベーターは上昇していたのだろうと思う。

世界の終わりとハードボイルドワンダーランド/村上春樹

想像力を掻き立てるような書き出しを提供することが望ましいと考える。

エレベーターはどこへ行くのだろうか。

そして、なぜこの登場人物は上に行くのかも下に行くのかもわかっていないのだろうか。

ショッピングモールのエレベーターではない可能性が高まる。

じゃ、いったいどこなのだろうか。

あちらこちらに未だ田畑を残す町並みを、バスはのろのろと寝ぼけたように進んでいった。
と、書いたところで不意にポンパときた。

アサッテの人/諏訪哲史

ポンパという聞きなれない言葉に、興味が向く。

親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしている。

坊ちゃん/夏目漱石

恥の多い生涯を送ってきました。

人間失格/太宰治

言わずと知れた有名な書き出しだ。

作品を読んだことない人でもこの一文を知らないという人は少ないだろう。

「ではみなさんは、そういうふうに川だといわれたり、乳の流れたあとだといわれたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとはは何かご承知ですか。」

銀河鉄道の夜/宮沢賢治

セリフから始めるとなんとなく印象に残りやすい。

先生のよく通る、少し張った声がセリフ回しから感じられる。

七年ぶりに見る吉岡は、眼鏡をかけている。

お茶が熱くてのめません/田辺聖子

吉岡とは誰だ。

なぜ、眼鏡をかけていることを最初に書いたのだろうか。

空白を埋めるために、滑るように続きを読んでしまう。

「この世界にアイは存在しません。」

i/西加奈子

書き出し展覧会の最後の書き出しだ。

iという題名でありながら、最初の一文でそれを否定する。

そのあとの、主人公の少々大袈裟な反応も引っかかる。

その理由が判然とする頃にはもう、小説の世界観に引き込まれてしまっている。

ドトール

単刀直入に言うとドタキャンだ。

子供の頃ドタキャンとはどたどた地団駄を踏んでまで予定をキャンセルしたいときに使うものだと思っていた。

こんな風に、意味が違っていても便宜上問題ない言葉の正しい意味を知ってた時、私は背中に嫌な汗をかく。

話を戻そう。

彼女と遊ぶ予定だったのだが、なんやかんやで頓挫してしまった。

不幸中の幸い。

私は暇をつぶせる本と、Lサイズのコーヒーを買っていたので、全然彼女を責める気持ちにはならなかった(とても残念には思ったが)。

しかし、彼女を責めたって時間が戻るわけでもない。

だから、私は本屋に旅立った。

往復二時間ほどの道のりを自転車で駆け抜ける。

本屋の中はまるで異空間だ。

いつの間にか時間がたっている。

万歩書店の本店は非常に広いので、あそこに閉じ込められても、水と食料さえあれば、一・二年は暮らせるように思う。

最後に今日手に入れた本たちをのっけておく。

今日は時間の関係で、エンタメ館(ラノベや漫画を取り扱っている)しか回れなかったが、なかなか面白そうな面々に出会えたと思う。

それではまた明日。

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