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#110 時と和紙を重ねた伝統「油団」

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

お知らせ

本題に入る前にお知らせをさせてください。
ソーシャルグッドな紙の作り方や使い方を提案するプロジェクト「Paper for good」第1弾の商品がリリースとなりました!
紙からできた、地球にやさしいピクニックシート「CITON(しとん)」です。
職人が一枚一枚手で揉んでシワを付けた和紙が4枚重なった贅沢なシートで、まるで綿が入っているかのような座り心地です。
色は、自然をイメージさせる淡いブルー、ピンク、グリーンの3色展開です。
シートを入れるオリジナルのバッグも付いており、ギフトにもピッタリです。
この「CITON」をもってピクニック行く場合と持って行かない場合で、満足度に5~10倍の差が出るとも言われています。
1月30日から予約開始となっており、ご予約いただいた商品は、5月から順次発送予定です。
ぜひチェックしてみてください。

それでは、本題に入っていきたいと思います。

和紙でできた敷物「油団」

皆さんは、部屋の床の上に何か敷きますか?
フローリングの上にカーペットやラグを敷いている方も多いんじゃないでしょうか?
家具屋さんに行くと、オシャレなカーペットが色々並んでいますよね。
最近は少ないでしょうが、昔ながらの日本家屋の畳の部屋だったりすると、何も敷かずにそのままだったりしますかね。

さて、いきなりですが、皆さんは「油団(ゆとん)」って聞いたことありますか?
聞いたことがある方はかなり少ないと思いますが、これ、和紙でできた敷物なんです。
和紙でできた敷物なのに「油」という文字が入っています。不思議ですね。
その秘密は、製造工程に隠されていますが、こちらは後程説明します。
ちなみに、清水紙工が先日リリースした「CITON(しとん)」の名前の由来は、この「油団」から来ています。

夏の風物詩

さて、質問です。パッと思いついた方をお答えください。

「和紙でできた敷物とカーペット、あなたはどちらを敷きたいですか?」

はい、カーペットですよね(笑)分かります。

じゃあ、ここからは「油団」の半端ないポテンシャルをご説明していきたいと思います。

まず、この油団ですが、夏に敷くものです。
なぜなら、油団の上に座ると涼しいから。
試しに、夏の猛暑日に油団の上に寝転んでください。
まるで森林浴をしているかのような感覚になります。
ウソじゃないです。本当にずっと涼しいんです。なんなら、寒いくらいです。
そう、油団は、夏の暑さを凌ぐ敷物なんですね。

油団の製法

続いて、皆さんがずっと気になっていたであろう、「油」の正体について解説していきます。

油団は、和紙を15枚ほど貼り重ねて作られていきます
この貼り重ねた和紙の表面に「荏胡麻(えごま)油」を塗っていきます。
ここが、油団の最大のポイントです。
和紙を重ねただけでは、先ほど申し上げた効果は出ません。
油を染み込ませることで、ひんやりとした敷物になっていくらしいんです。
しかもこれ、科学的根拠がないらしいんです。すごくないですか、考えた人。
ここまできたら、逆に科学的に証明してほしくないですよね(笑)

ちなみに、これと似た製法で作られたものがお隣韓国にもあります。
「オンドル」という床暖房に敷く紙も、紙に油を染み込ませたものなんです。
面白いですよね。

文化を繋ぐ

そんな油団、昭和中期までは多くの作り手がいたそうですが、現在ではたったの1社のみなんです。
福井県鯖江市の「紅屋紅陽堂」という表具屋さんです。
先人の知恵・技術・文化を、たった1社で継承されているというのは、本当にすごいことですよね。
本当に心からすごいと思います。

昔から夏の風物詩ということで、夏の季語にもなっていて、あの高浜虚子がこんな句を詠んでいます。

「柱影 映りもぞする 油団かな」

作者:高浜虚子

油団の上に柱の影が映る様子を詠んでいる句です。

油団は、使うごとに表面に艶が出てきて、色もどんどん深い飴色に変化していきます。
使うごとにどんどん味わい深くなっていくんですね。
僕も実際に見たことがあるんですが、何年も使った、光沢のある、深い飴色の「油団」に映る物影は、本当に美しい。
高浜虚子が詠むのも納得です。

日本は明治時代から一気に西洋化に振り切ったことで、生活様式もガラリと変わりました。
昔ながらの日本の木造建築は一気にコンクリートへと化しました。
建築家の隈研吾さんは、20世紀を「コンクリートの時代」や「ヴォリュームの建築」と表現しました。

日本の家には、素晴らしい素材や技術が多くありました。
障子、襖、畳、土壁、漆喰、瓦。挙げればきりがありません。
油団もその一つです。

メインストリートに乗っていない文化を継承していくのは、本当に大変なことだと思います。

でも、その本質的な価値が分かると、意味を変えて時代にマッチすることもあります。

僕は、紙を敷くという文化を、「CITON」で繋いでいきたいと思っています。
はい、最後も「CITON」の宣伝になってしまいました(笑)

今回ご紹介した油団、皆さんにも是非、実際に座っていただきたいです。
感動すると思います。
写真からも美しさが伝わると思いますので、紅屋紅陽堂さんのホームページも、ぜひチェックしてみてください。

という訳で、今回は以上となります。
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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