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#101 耐久性抜群の紙!三椏紙とは?

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

今回も、前回に引き続き、紙のご紹介をしていきたいと思います。
「#97 黒透かしと白透かし~紙幣に使われているスゴイ技術~」でも登場した、三椏紙です。そう、紙幣に使われている紙ですね。

今回は、そんな三椏紙を深掘りしていきたいと思います。

耐久性抜群の紙

さて、和紙と聞いてパッと思い浮かぶイメージは何ですか?
そう、「強い、長持ちする」ですよね!
「洋紙100年、和紙1000年」という言葉があるように、和紙は、非常に耐久性があると言われています。
和紙にも色々な原料で漉かれた紙がありますが、そんな中でも、桁違いに耐久性があると言われているのが、今回の主役「三椏紙」なんです。
お札になる理由も分かりますよね。

三椏の繊維は大体4~5mmで、漉くと、とってもなめらかで、吸水性に優れ、豊かな光沢のある紙に仕上がります。
三椏紙を実際に見てみたい!という方は、今すぐお財布の中から、お札を取り出してみてください。
強くてなめらかな紙ということが分かると思います。

三椏について

さて、この三椏なんですが、実は日本国内に自生地がないんです。
元々は、中国とかヒマラヤ地方原産の樹木で、それを日本に持ち込んだものだと言われています。
記録上では、室町時代に野生化したものが見つかっているそうですが、いつ、何の目的で日本に渡ってきたかは、今でも分かっていないそうです。

そんなミステリアスな過去を持つ三椏。
実は、名前と見た目が、イコールなんです。
どういうことか?
枝の先端が3つに枝分かれしているんです。
だから、三椏と呼ばれているんですね。
この特徴的な枝ですが、1年ごとに、前の年の枝の先端から、また3つの枝が生えてくるという特性があるので、枝の数を数えると年齢が分かるんです。
ネーミングも分かりやすい、年齢も分かりやすい、とても愛着が持てる植物、それが三椏です。

また、見た目の美しさにも定評があって、日本では紙の原料で使われる三椏も、世界的には、観賞用として栽培されているそうです。
また、春の季語になっているので、いろんな歌人に詠まれていたりもします。
各方面から引っ張りな植物、それが三椏です。

とにかく、三椏が、素晴らしい植物だということが分かっていただけたかと思います。

三椏紙の歴史

さて、皆さん、和紙の三大原料って聞いたことありますか?
まずは、今回取り上げている「三椏」。
それから、前回の放送で取り上げた「雁皮」。
最後に、「楮」という植物もあります。
そんな3つの原料の中で、三椏は、使われ始めたのが最も遅いと言われています。
先ほどもちょっとだけ触れましたが、室町時代の終わりごろに、野生化したものが見つかっています。

江戸時代になると、三椏の栽培が本格的に始まっていきます。
もちろん、紙の原料として。

その後、明治になると、三椏の栽培が一気に広がっていきます。
その理由は、明治政府が、紙幣印刷用紙に三椏紙の使用を決定したから。
ここからは、紙幣の原料が三椏になるまでの流れを解説していきます。
まず、背景として、明治維新によって幕藩体制が終わったことによって、全国共通の通貨をつくる必要がありました。
江戸時代にも藩札がありましたが、藩札で使われていたのは、楮と雁皮でした。
最初に作られた「太政官札」は、これをまねて作られましたが、偽札がめちゃくちゃ流出したので、直ぐに生産中止となりました。
そこで、一旦、ドイツの民間会社に委託して作らせましたが、ぼろ布が原料で紙質が悪く、これも不採用となります。
そこから、試行錯誤を重ね、ようやく明治12年に三椏の紙幣が誕生します。
この試行錯誤の技術指導を行ったのは、越前和紙の職人さんだったそうです。

海外でも絶賛された「局紙」

こうして出来上がった三椏の紙幣ですが、実は、伝統的な紙の漉き方と違うんです。
「#62 【和紙ネタ】和紙が薄くて丈夫な理由①~漉き方編~」でも取り上げましたが、手漉きの紙の漉き方には、大きく分けて2種類あります。

「流し漉き」と「溜め漉き」。
日本の伝統的な漉き方は、流し漉きです。
一方で、この紙幣に採用された三椏紙は、溜め漉きで漉かれています。
この、溜め漉きで漉かれた三椏紙のことを、「局紙」と言います。
局紙の「局」の字は、印刷局からきています。

局紙は、印刷適正が高く、耐久性もあり、見た目もきれいなので、紙幣以外にも、証券洋紙や賞状などにも使われています。
その活躍ぶりは国内にとどまらず、1878年のパリ万国博覧会でめちゃくちゃ高く評価され、それ以来は、海外への輸出も増えていったそうです。

和紙の原料としてはスロースターターの三椏ですが、今なお活躍する素晴らしい三椏紙ということが分かりました。

今回は以上となります。
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

<参考文献>
『ものと人間の文化史181・和紙植物』/著者:有岡利幸/発行社:一般財団法人法政大学出版局

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