本直し -ジャパニーズカクテル-
本直しという飲み物を初めて聞いたのはとあるグルメ漫画だった。夏の暑い盛りに気付けに飲んでいたという紹介だった。
端的に言うと味醂と焼酎を混ぜて飲む昔ながらのお酒なのだが、その歴史を史料で確認してみた上で実際に作って飲んでみたい。
●『守貞謾稿』に見る本直し
食べ物や飲み物の由来を探る場合、問題となるのはそのレシピであるが『守貞謾稿』という1800年代の百科事典にそれが見える。『守貞謾稿』は喜多川守貞という人物が1837年から約30年かけて書いたもので、近世の風俗史を知る上でも重要な史料である。史料によると
京坂夏月には夏銘酒柳蔭と云を専用す
江戸本直しと號し美醂と焼酎を大略半之に合せ用ふ「ホンナホシ」「ヤナギカケ」ともに冷酒にて飲む也
とあり意訳すると「京都、大坂では夏に柳蔭と言うもので、江戸では本直しと言い、味醂と焼酎をだいたい半々で混ぜて飲む。本直し、柳蔭ともに冷酒で飲む」となる。
つまり、京都、大阪では柳蔭(やなぎかげ)、東京では本直し(ほんなおし)と呼ばれる飲み物で、そのレシピは常温の味醂と焼酎を1:1で混ぜる飲み物ということになる。
●作って飲んでみよう
近所のスーパーで手に入る味醂と焼酎を用意した。
味醂は本来は添加が無いものが望ましいが残念ながら売ってなかったので写真のものを用意した。
焼酎も麦か米か迷うところであるが便宜的に甲類焼酎を用意した。
『守貞謾稿』に記載される通り、常温の味醂と焼酎を1:1で割ってみた。液色は味醂のやや黄金色がかった色が薄まった感じで、飲んでみると甘く飲みやすい。味醂を単体で飲むと甘さや風味がキツく感じられるが、そのキツさが和らげられ程良い甘さとなり非常に飲みやすい。現代的に冷蔵庫で冷やしたら更に飲みやすい甘さとなるだろう。
地域によっては砂糖が貴重だった名残から現代でも「甘さ」を美味しいものと捉える向きがあるが、その尺度でいうと美味しい飲み物といえる。
といってもややベタついた甘さではあるのでバーで飲むような洗練されたカクテルとは一線を画すであろう。やはり昔の庶民の飲み物なのかもしれない。もし興味を持った方がいれば一度試してみて欲しい。
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