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【ショートショート】 鏡の中のオレ

目の下に、少々クマが出来てはいるが、鏡に映る
32才のイケメンは、俺だ。

周りは、ナルシストだ何だとうるさいが、
そんなことは、気にしない。
自分好きの奴なんて、この世の中
掃いて捨てるほど、いるだろう。

俺も、その中の一人ってだけ。
プラス、顔がいいってだけ。

その日も俺は、最後の仕上げ、髪にワックスを
つけていた。


俺「今日も、いい感じじゃん。やっぱ、いつ見ても
  男前だな」

いつものように、鏡に映る自分に、話しかけた。
その時、違和感を感じた。
鏡の中のオレが、微動だにしないのだ。

俺 「えっ? 何コレ、えっ? 怖っ!」

オレ「ああ、怖がらないで、ボクはキミなんだから」

鏡の中のオレが、しゃべった。

俺 「・・・どういうこと」

オレ「ずっと、キミの真似ばかりしてるから
   何かさ、疲れちゃって」

俺 「それは・・・ごめん」

オレ「いいんだ、謝らなくて」

鏡の中のオレは、哀愁漂う顔も美しい。

俺 「じゃ、休んでればいいよ」

オレ「それはダメなんだ。 決まりだから。
   そうだ、ちょっとだけ交替してみないか
   5分だけ」

俺 「えっ、でも」

オレ「3分は?」

俺 「ん、まぁ いいけど」

オレ「ありがと!じゃ、手を出して」

俺は、言われるがまま手を出すと、鏡の中のオレに
ひっぱられ、一瞬で交替した。
まぁ、3分だからなと、悠長にかまえている俺を尻目に
アイツが、口の端を上げてほくそ笑んでいたのを
俺は気づかなかった。


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