【ｼｮｰﾄ ｼｮｰﾄ】 ネコかぶり

ぼくは、いまだに女の子と付き合ったことがない。
確かにモテはしないが、ちゃんとした理由があるんだ。

実はぼく、見えるんです。
えっ？霊じゃありませんよ・・・ネコがね。
ああ、あなたにも見える？
ソレ、普通に街中を歩いている猫でしょう。
ぼくには、女の子たちがネコを被って歩いている
姿が見えるんだ。

もちろん、本物の猫じゃないよ。
その能力？に気づいたのは、大学二年の頃。
わりと可愛いくて、有名だったＭちゃんから
話かけられた時だった。

Ｍ「Ｙ君って、いま誰かと付き合ってる？」

Ｙ「いや、付き合ってないけど・・・」

と言って、その彼女を見た時、Ｍちゃんの頭の上に
一匹のネコが、乗っかっていた。
白地に、黒いブチのあるネコだ。
まさか帽子？　それが今のトレンドか？

Ｙ「あのさ、頭の上にネコ・・・」

Ｍ「えっ？　ネコ？　どこに？」

彼女は、自分がネコを被っていることに
気づいていないらしい。
よく見ると女子の大半が、ネコを被っていた。
ぼくの見間違いなのかと思って、友人に聞いたけれど
一笑された。

友「まあ、確かに。男子の前で、ネコ被ってる子
　　いるよなぁ、でもそれって結局、好きな人に
　　自分を可愛く見せたいっていう女心だろう」

Ｙ「いや、まじのネコ・・じゃなくて、他の人には
　　見えてないけど、ネコなんだよ」

友「・・えっ？うん？ オレは別にイヤじゃないけど」

Ｙ「オレも別に、いいと思うよ。見えなければね」

友「・・・？？」

ぼくには、友だちがいない。
最後の友人も、去っていった。
ネコが見えるせいで、みんなに気味が悪いと
思われている。
だって『ネコかぶり』が見えるんだからしょうがない。

最近、女子を見ていて思うのは、好きな男性の前だと
何匹もネコを被るらしく、自然に首が傾いて
しまっている。
あれは、間違いなくネコの重さだろう。
何匹か被っている証拠だ。

よく見ると、結構な確率で小首を傾げている。
可笑しすぎて、マスクの下では笑いが止まらない。
誰か助けて〜。
周りから見ると、何もないのに肩を揺らして笑っている
オレが、さぞ不気味に見えるのだろう。

ちなみにＭちゃんの頭のネコは、３匹に増えていた。
白地に黒ブチと、三毛と、茶トラだ。