ガラスの靴
薄暗い街の路地裏に
不釣り合いな ガラスの靴
誰かが忘れていった
片方だけの ガラスの靴
わずかな陽の光を浴びて
プライド高く
その場所に佇んでいた
本当は忘れられたのでも
置きざりにされたのでもなく
不要物の烙印を押されて
捨てられたのだ
『 まさか自分が捨てられるなんて、、、』
ガラスの靴は認めなかった
認めたくなかった
こんなことなら
粉々にされた方がましだ
硬くて冷たいガラスの靴は
誰も履くことは出来なかった
小さくて片方だけしかないうえに
傷ついて薄汚れてもいたから
一人の少女がそっと
ガラスの靴に足を忍ばせた
足は入ったけれど歩けはしない
現実には痛くてムリだ
それでも
いつかはシンデレラのように、、、と
夢は広がっていく
少女にとっては憧れの靴だ
誰もが知っているガラスの靴
たとえ片方だけでも
履けなくてもかまわなかった
大事そうに両手で抱えて
家路に着く
少女の手によってまた
輝きを取り戻すだろう
ほらね
私はガラスの靴よ
シンデレラストーリーに
憧れを抱いている少女は
たくさんいる
捨てるなんて ホント
想像力のカケラもないのだから
鼻高々に でも少し哀しそうに
ガラスの靴は笑った
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