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不欲勿施...自分が人からされたくないことは、人にしてはいけない。
己の欲せざる所は人に施すこと勿(なか)れ。
(顔淵第十二、仮名論語一六二・一六三頁
衛霊公第十五、仮名論語二三七頁)
先師(孔子)が言われた。
「自分が人からされたくないと思うことは、
人もいやなのだから、それを人にしてはいけない」
いつも持ち歩く小銭入れに、
一センチ強の化石が入っている。
五億年前のカンブリア紀三葉虫の化石である。
小銭を出す度に、五億年という時間の長さ、
殆どの動物の門(生物の分類)の先祖が出現した
カンブリア紀の多様性について考えさせられる。
この地球上に人として生かされている刹那、刹那の大切さも。
「プラスチックが、人間が生きた時代の化石になりつつある」
と、環境学者の東京農工大学高田秀重教授は警告する。
霊長類学者の京都大学山極壽一総長もまた
「人類の時代としての地層に、プラスチックと放射能が残ってしまった」と語る。
ペットボトルやレジ袋といったプラスチックは
購入後すぐに用済みとなる。
先進国では多くがリサイクルされるか焼却される。
ごみの収集体制が整わない新興国や途上国では、
捨てられて川から海に流れ出る。
海への流出はアジアからが最も多く、
毎年少なくとも八百万トンが流れ込む。
海流によってプラスチックごみが集まる海域を
「太平洋ごみベルト」と呼ぶが、
その面積は日本の国土の四倍にもなるという。
このプラごみは海を漂流するだけではない。
紫外線や波の力で微細に砕かれ、
魚介類やプランクトンが餌と間違え食べてしまう。
東京湾で捕れたカタクチイワシを調査した高田秀重教授は、八割近くからプラスチック片が見つかったとして、「魚介類を食べた鳥や人間にも悪影響がないとは言いきれない」と言う。
一方、米アリゾナ大学などの研究グループは、
米国や英国など世界十三ヶ国の水道水で
マイクロプラスチックが検出されたと警告。
また韓国仁川大学と環境保護団体も、
世界各地の塩を調査して、
二十一の国・地域の塩の九割に
マイクロプラスチックが検出されたと発表した。
魚が頻繁に食卓に上る我が家は、
疾(と)うにマイクロプラスチックで汚染されているということか。
有害廃棄物の国際的な移動を規制する
バーゼル条約の締約国(参加国)会議で、
汚れたプラごみを輸出入の規制対象とすることが決まった。
この規制案をノルウェーと共同で提案した日本は、
汚れてリサイクルができないプラごみを
中国やアジアの国々へ輸出してきた経緯がある。
輸入国で処理がなされないまま放置され、
海に流出するなど環境汚染が問題となっていた。
このことはG20大阪サミットでも論議された。
「己の欲せざる所は人に施すこと勿れ」(顔淵篇、衛霊公篇)である。
これを契機に一人ひとりが
プラスチックに依存した生活を
見直さなければならない。
今から五億年後に、新しい人類
もしくは新たな知的生命体が
土壌の入ったサンプル瓶を手にして、
「このプラスチックで汚染された堆積層は、
かつて地球上に生息したホモ・サピエンス
という人類のものか。
…厭離(えんり)穢土(えど)…」と。