午前零時の右手

よく混ぜられた納豆の糸のように
テラテラと玉虫色のシャボン液が中指と人差し指の間に粘る
第一関節が小枝のようにして蜘蛛の巣を形成し捕食の対象を待ち構えて七色に光る

左手には極彩色のスマート・フォン
一秒前までのときめきはすっかり無価値以下のゴミだ
急いでデータを消去しにかかる

その前に暗闇の中で極度の疲労を呈するは
しばたく両眼と下腹の奥
徹夜の後のように痺れていて
百メートル走の後のように息切れていて

わたしはそんな右手を手近な布切れで拭き、
眠れない午前零時
やけに覚めた頭で文を綴っている。

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