入院短歌
ビフテキが食ひたし病院食めにう鶏肉ばつかり脂気もなし
親の面よりも見飽きた新聞の一面にある首相の御顔
「ろまんすの日」に生まれをりわたくしの赤い糸の先未だ不明
時間なら幾らでもある病室で下手な短歌をぽろぽろこぼす
ひとかどの者になる前に狂い終えさて余生はどう使おうかしら
あてのない手紙書くより返事来ぬエックスの方が気楽なりけり
紙一重よく言うけれどあまりにも典型的な狂い方なり
折り紙をやるのにも飽き、病人はそのうち病んでいることに飽き、
「何かしら諸事情ある」人しかいないやさしいはこにわ二階病棟
美しくカワイくcoolで強かな変態的な日本の私
病食で出るくだものはバナナとか冷凍ライチ、パイン缶など
売店のお菓子は高い。妥協案としてラテとかカフェ・オ・レを飲む
狂う自由、というのがもしあるならばおどろくなかれ他人(ひと)の発狂
ケーキ吐き、カツを消化し誕生日 歯の裏残る胃酸の風味
十代に見えると誰もが言ってくる それじゃあ私、17歳で♡
ノーベルさんにもらったお金で川端さん賞つくったの?まぢりすぺくと
入院してから3度目の生理くる 規則正しい月が流れる
村上龍 読めばたふねす養へり 現実ばなれはしているけれど
病食で毎度出される人間の眼球のような冷凍ライチ
午前だけ使用可能のシャワー室あり強制的に朝シャンである
個室にてデイルームから笑い声聞きおり まるで 老人ホーム