スピノザ その2
17世紀のオランダの哲学者スピノザ。彼の理想の人間像とは「自由人」である。
その自由人とは、「死について考えず,その知恵を生に注ぎ,自分と他人を向上させることに専念する」者であるとする。
その死生観ともいえる内容は、複雑かつ困難な時代を生きる私たちにさまざまなメッセージを投げかけています。これは一度否定されたスピノサの哲学が、正しさを証明され再び評価されたということに他ならない。
フランスの思想家であるジル・ドゥルーズ(1925年~1995年)は、スピノザ哲学の実体論の現代性を評価し、『スピノザと表現の問題』、『スピノザー実践の哲学』などの研究書を著して啓蒙しています。
『神学・国家論』においてスピノザは、国家の目的は個人の自由にあるとしました。さらに自然を超越した存在者を一切認めないと表明し、キリスト教神学者から激しく非難され、禁書となったのです。
国家が専制政治を避けつつ国民の平和と自由を保持するためにはいかに組織されるべきかを根本課題としたスピノサの著作本は未完に終わっていますが、近代国家理論の古典的思想として今なお評価されています。
スピノサの代表作『エチカ』の正式な表題は『エチカ 幾何学的秩序によって証明された』です。
本書は『神学・政治論(国家論)』が禁書となった影響からスピノザの生前は出版されていません。
死後に友人の手によって刊行されました。本書はスピノザが全生涯をかけて思索した主著であり、死の2年前に完成しました。
『エチカ』はスピノザ哲学がすべて網羅され、形而上学、心理学、認識論、倫理学のすべてを「幾何学的方法」によって展開したものといわれる。
定義・公理・定理・証明からなる一大体系の書で、具体的には、スピノザ哲学の根本思想である神即自然の汎神論、実体の唯一性、認識による神との合一などを具体的に提示しています。(一部Webから引用)
私たちが、スピノサを理解できる言葉を『エチカ』から2,3引用してみよう。
1、自由な人間は何よりも死について理解している。そして彼の知恵は、それを死についての省察ではなく、生きることについての省察に向けることである。
2、人生でもっとも有益なものは、知性あるいは理性をできるだけ完成させることである。そしてこの点にのみ、人間の最高の幸福あるいは至福がある。
3、人間が妬みや憎しみの感情にかられているときに限り彼らは、たがいに対立的である。
4、他の者のために奉仕した人への愛が好意である。敵意とは、他のものに禍をもたらした人への憎しみである
スピノザは、超越神を排除した世界観を提示した。それが、当時のヨーロッパにおいては、あまりにも過激で常識外れだったため、多くの人にとって受け入れることができないものとなった。
既成宗教が実在を説いた「聖霊」は、精神の中に生み出す心の平安以外のなにものでもない」とまで語ったスピノザの思想は、時代を先取りしていたのでしょう。
スピノザの哲学は、私のように唯一絶対の神の世界に馴染まない者にとっては、自然に受け入れられやすい思想なのかもしれない。神(自然)には外部がなく、自分の中の法則だけで動いている。自然の中にあるすべての物は自然の法則に従っているのだから、超自然の奇跡などは起こりえません。
スピノザの「神即自然」の考え方は自然科学的である。
私たちが仰ぎ見る空間の不思議さ、無限に広がっているものを神と呼びます。
あらゆる物体は、神に由来してしか存在しえない。 神は、そこからあらゆる物体が生じてくるところの基礎であり、神が思惟する仕方と同じように、自然世界は存在する。 こうした世界観、汎神論を世に説いた哲学者がスピノサであった。
このような考えの発祥は古代ギリシャにあり、そこから発展した仏教哲学が科学的で今なお消えることなく時代を啓蒙している。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?