1人の才能で属人化された組織はリスク
[要旨]
株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、アイデアや商品が素晴らしいと、ある程度の事業化は可能ですが、環境は常に変化するため、組織によって新たなアイデアが生み出され、それを迅速に収益化するという段階が必ず訪れるということです。ただ、それはその必要性が生じてから組織体制を整えても間に合わないので、起業する段階から体制整備を行うことが求められるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「とにかく仕組み化-人の上に立ち続けるための思考法」を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、「トップダウン」にネガティブなイメージを持っている人は少なくないものの、意思決定はトップダウンで行われ、情報提供はボトムアップで行われることは組織の原則で、両者は表裏一体であるということについて説明しました。
これに続いて、安藤さんは、アイデアだけで起業すると、組織が属人化することになり、事業活動が安定しないリスクが高くなるということについて述べておられます。「アイデアや商品が素晴らしいと、そのカだけで、ある程度の事業化は可能です。1人の優れたデザイナーや映画監督がいることによつて、うまくいく組織がありますよね。ただ、環境の変化は起こります。『ヒットが出なくなる』、『アイデアが枯渇する』、そうなった後に、組織のカが発揮されます。
うまくいかなくなったときに、いかに組織によってアイデア出しがなされ、実現までスビードを保ち、失敗を改善していくか。そのフェーズが必ずおとずれます。しかし、私は、そうなってからでは遅いと考えています。1人の才能によって、属人化された組織は、リスクです。早いうちに『仕組み化』によって組織をつくり上げておかないと、最終的に『倒産』という形で責任を負ってしまいます。個人のカで、行けるとこまで行ける。でもやがて頭打ちになる。その事実に、人の上に立つ人は、いち早く気づき、手を打つベきなのです」(232ページ)
私がこれまで起業のお手伝いをしてきた方の多くは、「事業を成功させるためのよいアイデアがある」という方や、「自分は競争力の高い優れた技術を持っている」という方がほとんどでした。これらは、起業するための動機ととして最もポピュラーであり、また、妥当な考え方だと思います。ただし、このようなきっかけで起業したときは、気を付けるべき点があると、安藤さんと同様に私は考えています。
というのは、よいアイデアがあったとしても、それを事業化したときに必ずしも成功するとは限らないということです。また、成功したとしても、そのアイデアに基づく事業が、いつまでも競争力が高い状態が続くとは限りません。そこで、うまく行かなかったときに備えることが欠かせません。これについても安藤さんがご指摘しておられるように、迅速に新しいアイデアを出す仕組みをつくっておくということです。
これについては、ほとんどの方に容易に理解していただけることなのですが、起業するときはどうしてもバイアスがかかり、自分のアイデアは必ず成功すると思ってしまうようで、失敗する可能性があるという前提での対策はあまりとられていないようです。また、仮に、経営者の方がそれに気づいていたとしても、起業までの準備期間や起業した直後の「離陸期間」は、多くの業務をこなさなければならないので、「仕組み」をつくるまでの余裕がないと考えている方も多いようです。
しかし、せっかく起業するのであれば、冷静に考えていただき、成功する確率をより高くするために、余裕をもったスケジュールで、「仕組みづくり」をすることが望ましいと言えます。繰り返しになりますが、事業活動は組織的な活動ですので、1人のアイデアだけで成功すると考えてしまうことは事業が不安定になるリスクが高くなるため、仕組みづくりもあわせて行うことが大切と言えます。
2025/1/10 No.2949