シェアトップの座を奪い返した方法
[要旨]
キリンビールが、ビール系飲料のトップシェアの座を奪い返したときの、営業本部長だった田村さんは、特別なことをしたようではなく、実効性のある営業活動を徹底して行うよう、強力なリーダーシップを発揮したことに尽きるようです。このような基本的な活動を見直し、実践することは、とても大切です。
[本文]
キリンビール元副社長の田村潤さんのご著書、「キリンビール高知支店の奇跡」を読みました。(ご参考→ https://amzn.to/3acEjrC )キリンは、2001年に、ビール系飲料のシェアのトップの座をアサヒに奪われましたが、田村さんは、8年後にキリンがその座を奪い返したときの営業本部長でした。その田村さんは、1995年に、同社の中でもあまり営業成績がよくなかった、高知支店に支店長として赴任し、営業方法のたて直しを行った結果、2001年に、高知県での同社のシェアをトップにしました。その後、四国地区本部長、東海地区本部長、本社営業本部長と赴任し、同社のシェア奪回に貢献して行きました。
では、どうやってキリンはシェアを奪い返したのかという点に、多くの方が強い関心を持つと思いますが、私が同書を読む限りでは、営業活動を忠実に行ったということしか読み取ることができませんでした。むしろ、かつての同社では、会議のための会議、指示を受けたからしぶしぶ顧客先を回るという営業活動が横行していたようです。そこで、田村さんが、もっと実効力のある営業活動をするよう、営業職員を鼓舞してきたということに尽きるようです。端的に言えば、かつてのキリンは、ある種の大企業病になっていて、営業マンは受動的な営業活動しかしていなかったしていたのでしょう。
それに対して、田村さんがリーダーシップを発揮して、能動的な活動を行うよう促したところ、実効性のある営業活動が行われるようになり、シェアを奪い返すことができたということのようです。事実、高知支店では、営業マンが酒販店や飲食店を回りながら、なぜ、アサヒビールを販売しようとするのか、なぜ、顧客がアサヒビールを飲もうとするのかということを調査し、それへの対策を行ったという、本来、営業マンが行うべきことしか実行していません。でも、このような活動を徹底させることは簡単なようで、実際には、なかなか実践してもらうことは難しいことなのでしょう。
結論としては、トップシェアを奪い返した方法は、裏技でも必殺技でもなく、本来の活動を徹底して行ってもらえるような、強力なリーダーシップを、田村さんが発揮したということだと思います。一方で、現在、業績が伸びないで悩んでいる経営者の方が、たくさんいると思いますが、まだまだ、万策尽きたとは言えないのではないかと、私は考えています。ぜひ、田村さんのような、強力なリーダーシップを発揮することなど、まだやり残していることはないかということを、見直していただくことをお薦めします。