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銀行が自社の状況を理解してくれない

[要旨]

中小企業が銀行から融資を受けようとするとき、銀行が自社の状況を理解してくれないということがしばしば起きているようです。その理由として考えられることは、説明の内容は、自社の努力や意気込みなどが中心で、売上高や利益額の見込みなど、具体的な数値を示していないことです。したがって、そのような中小企業では、自社の事業改善のためにも、管理会計を活用できる体制を整備することが求められます。

[本文]

先日、中小企業経営者の方から、銀行との意思疎通がうまく行かないとのご相談を受けましたので、その回答内容をシェアしたいと思います。ご相談内容は、時間をかけて、取引銀行に追加融資の依頼をしたのだけれど、否定的な返事しか得られなかったので、今後の打開策を教えて欲しいというものです。まず、回答の前提として、業績がよい会社の場合は、銀行が積極姿勢で融資に応じると思いますので、当該会社は、利益額が少ないか、赤字の状態と考えられます。また、債務超過の状態であれば、追加融資は難しく、そもそも銀行は交渉には応じないので、当該会社は、債務超過には至っていないと考えられます。

では、融資に応じてもらえるかどうか、ぎりぎりの状態の会社はどうすればよいのかというと、融資に応じてもらえる材料を提供すればよいということになります。ところが、ある面は仕方ないのですが、私が銀行職員時代の経験から感じるところは、融資をして欲しいと依頼する経営者の方の多くは、自社は努力している、今後、業績が回復するということは賢明に伝えるのですが、具体的に、売上高や利益額がどれくらい見込めるのかということについては言及しません。というよりも、そこまでは算出していないので、言及しないのでしょう。

これは、ある意味、当然なのですが、経営者自身は、自分がこれだけ努力しているのだから、その努力を評価して欲しいという思いで融資承認を得ようとします。銀行職員にも、大抵の場合は、その気持ちは伝わっていると思うのですが、やはり、どれくらい売上高や利益が改善するのかが分からなければ、「この会社は売上増加に努力しています」としか融資稟議書に書くことができないので、それでは承認を得ることはほぼ無理でしょう。この点については、第三者から見れば至極当然のことと理解していただけると思うのですが、経営者の方の中には、いわゆる、努力や希望的な観測で融資承認を得ようとする方は少なくありません。

そこで、銀行に納得してもらうためには、根拠のある売上高・利益額の推移の見込、すなわち、計画損益計算書を、3~5年分作成して提出する必要があります。場合によっては、同じ期間の計画資金繰表も作成します。もちろん、計画損益計算書は、あくまで予測に基づくものですので、それが実現可能性が高いという根拠も合わせて示す必要があります。事実、私が、これまでお手伝いをしてきた中小企業では、私の支援に基づいて、これらの資料を作成し、提出したことによって、口頭での説明はあまり行うことなく、融資承認を得ることができました。

では、計画損益計算書などの資料を提出すれば、銀行は納得するということは理解できるとして、融資を受けるために、融資を受けようとするたびに、中小企業はそれらの資料を作成する労力をかけなければならないのかという疑問をお持ちの経営者の方もいるかもしれません。これについては、詳しくは述べませんが、銀行が求める資料は、銀行から求められるから必要となる資料ではなく、その前に、自社にとっても事業改善に活用できる資料であると考えることが妥当だと思います。むしろ、業績のよい会社ほど、財務会計だけでなく、管理会計を効果的に活用しています。

ですから、繰り返しになりますが、銀行が求める資料は、「本来は必要ではない資料を、銀行が提出を求めるから仕方なく作成している」とは考えず、「自社が事業を改善し、ライバルと差をつけるために、積極的に活用する資料」と捉えるべきだと思います。もちろん、資料の整備にはそれなりの労力が必要ですが、それらを活用することで、その労力以上の効果が得られます。というよりも、管理会計は、VUCAの時代の会社経営には必須と考えるべきでしょう。ところが、ここで、ネックとなることがあります。それは、管理会計の活用を支援する機関が相対的に少ないということです。

会計事務所でも、管理会計の活用を支援するところはありますが、その割合は高くないようです。また、会計事務所が管理会計の活用法を支援する場合であっても、多くの場合は、税務会計の支援と合わせて行うことが多く、高い専門性を持って支援する会計事務所はさらに少ないということが現状のようです。したがって、管理会計を活用をしてみたいと考えているにもかかわらず、顧問税理士ではなかなか対応してもらえないという場合は、商工会議所や財務分野を得意とする中小企業診断士などに支援を相談することをお薦めします。

2023/8/23 No.2443

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