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商売は真正直にやるのが一番儲かる

[要旨]

ドン・キホーテ創業者の安田隆夫さんによれば、かつて、安田さんは、売る側からしかものを見ることが出来なかったため、その風圧が顧客に伝わり、逆効果となっていたそうです。そこで、安田さんは、無私で真正直な商売に徹することにし、同社で追求するのは、「金(売上と利益)より人気(お客様の支持)だ」と割り切ったところ、そう決めたとたん、売上と利益はみるみる上がり出したそうです。すなわち、商売は真正直にやるのが、最終的に一番儲かる方法なのだと考えるようになったそうです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、安田隆夫さんのご著書、「運-ドン・キホーテ創業者『最強の遺言』」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、かつて、安田さんは、「成功して認められたい」など、自分のことしか考えていなかったところ、部下たちから自分だけよい思いをしたいという魂胆を見透かされ、事業がうまくいかなかったことから、「どうしたら従業員たちを幸せにすることができるのか」を考え、提案を続けていった結果、次第に事業も上手く回り始めたということを説明しました。

これに続いて、安田さんは、無私で真正直に経営に臨むことが盛運をもたらすということについて述べておられます。「商売を始めた頃の私は、売る側からしか、ものを見ることが出来なかった。売ろうとするから売れない。儲けようとするから儲からない。なまじハングリーだから、余計にそれが強く出て悪循環に陥っていたのだ。下手なお笑い芸人ほど、観客を笑わせようという意識が画面に出て、結局、笑わせることができず、場はますますしらけてしまう。これと同じ構図で、売ろうとすればするほど、お客様はその風圧を感じて、逆にドン引きしてしまうのだ。

そんな辛酸を何度も舐め、私はどうしていいのか分からずに行き詰った。『なぜ商品が売れないのか』、『どうしたら買ってもらえるのか』、ボトルネックを脱却する方法をいろいろと考え抜き、ようやく見えて来たのが、『売る側の一方的な意図など、買う側からは簡単に見破られてしまう』ということだった。例えば、『どうせ元値は分からないんだから、この際、ちょっと儲けてやろう』、『ちょっと誇大に宣伝してやろう』という安易な商売っ気は、必ず買う側に見抜かれてしまう。

その時はバレずに一時的に儲かっても、間違いなく後で手痛いしっぺ返しを喰らうのだ。読者のみなさんはこう思われるかも知れない。『他の店でも売っている商品で暴利をむさぼろうとすればバレるかもしれないが、他店にない独自商品ならわかりゃしないだろう』と。しかし、必ずバレるのである。これは理屈ではない。売り場が発する不正直な気配といおうか、ズルそうなオーラといおうか、そんなものが店全体に立ち込めて、最後は必ずお客様に見抜かれてしまうのである。

それを知った私は、ならば無私で真正直に商売をやろうと思った。ドン・キホーテで追求するのは、『金(売上と利益)より人気(お客様の支持)だ』と割り切ったのである。不思議なもので、そう決めたとたん、売上と利益はみるみる上がり出した。結局、商売は真正直にやるのが、最終的に一番儲かる方法なのだ。私はここで、いわゆる『商人道』を説くつもりはさらさらない。現代の商売において、真正直こそが最も実効性の高い、盛運をもたらす現実的手法だと言っているのである」(129ページ)

安田さんは、「ドン・キホーテで追求するのは、金(売上と利益)より人気(お客様の支持)だ」と述べておられます。では、安田さんは、どうやって人気(お客様の支持)を得て来たのかというと、その最大の方法は、プライベートブランド(PB)商品の開発だと思います。同社の業績が好調である最大の要因は、同社のPB商品の販売が伸びていることだと思いますが、同社のPB商品は、2024年6月期は2,461億円(構成比19.3%)で、前期から482億円増加となっています。

このことは、PB商品の価格や品質の魅力が高いという要因もあると思いますが、それに加えて、「ドン・キホーテのPB商品の購入によって、賢く間違いのない買い物が実現できる」というカスタマーエクスペリエンス(CX)を顧客に実現させているという面もあると思います。もちろん、「無私で真正直な商売」の実践方法は、PB商品の開発以外だけではありませんが、安田さんの想いを確実に実践していることが、同社の業績の好調さを支えていることに間違いはないと思います。こういった、カスタマーオリエンテッドに基づく活動の大切さを改めて感じました。

2024/8/26 No.2812

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