『小さな三角形』で会社が早く成長する
[要旨]
ミスターミニットの元社長の迫俊亮さんは、同社社長時代に、「リーダーと5人程度の小さな三角形」を、組織の中に無数につくろうと考えたそうです。それは、自律的に動けるたくさんのリーダーがいれば、組織ははるかに速く成長できると考えたからだそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、迫俊亮さんのご著書、「やる気を引き出し、人を動かすリーダーの現場力」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、ミスターミニットは、かつて、KPIにクレームに関する項目があったため、従業員たちが委縮して、クレームになりそうな仕事は最初から断り、それがさらに顧客の満足度を下げていたことから、迫さんは、KPIからクレーム項目を外し、また、失敗しても評価を下げないことを約束することで、従業員の顧客への積極的な姿勢を回復させていったということを説明しました。
さらに、迫さんは、権限委譲が会社の成長のために重要であると述べておられます。「『社長100人の部下の大きな三角形』(できてしばらく経ったスタートアップはだいたいこの形だ)をひとつつくるのではなく、『リーダーと5人程度の小さな三角形』を、組織の中に無数につくろうと考えた。社長がすべてを管理し、指示する、『大きな三角形』型の組織では、社長のキャパシティが成長の『上限』になってしまう。でも、もしも、自律的に動けるたくさんのリーダーがいれば、組織ははるかに速く成長することが可能になる。(中略)
僕は、すべてのリーダーに、それぞれの強みを活かせる仕事に就いて欲しいと思っている。一口にリーダーといっても、その個性はさまざまだ。特に、ミスターミニットのような老舗企業には、経験が武器のベテランもいれば、勢いのある若手もいる。無口だが技術にはピカイチの職人肌もいれば、オペレーションを整えるのが得意な実務家タイプもいる。だからこそ、より多くの人が『小さな三角形』の頂点を担えるよう、新たなリーダー職を増やして来た」(147ページ)
迫さんが言う「小さな三角形」とは、稲盛和夫さんが考えたアメーバ(独立採算で運営する小集団)と同じだと思います。そして、これも迫さんがご指摘しておられるように、会社が「大きな三角形」のままでは、社長のキャパシティに限界があり、会社の成長も限界ができてしまいます。このことも理解することは難しくないのですが、中小企業経営者の方の中には、多くのことを自分で決めないと気がすまないという方もいるようです。
そして、迫さんがご指摘しておられるように、社長だけが意思決定を行っているために、社長のキャパシティがボトルネックとなって会社が成長しないという例は少なくありません。もちろん、会社の規模を大きくする考えがない会社であれば、社長だけが指示を出していればよいのですが、社長が会社を成長させようと考えているにもかかわらず、意思決定は社長1人だけで行っていれば、アクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態と言えるでしょう。したがって、会社の事業については、現場の従業員の方に任せ、経営者の方は、小さな三角形を増やす、つまり、リーダーを育成することに専念することが、会社を効率的に成長させることになります。
2023/10/17 No.2498