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企業の価値をつくるのは従業員

[要旨]

製品は、売り場づくりや接客によって、価値が向上します。しかし、そのような活動にかかるコストは、製品の価格競争力を損なわせると考える会社は多いようです。でも、アイリスオーヤマの大山さんは、顧客に製品の価値を気づいてもらうことが大切という考え方で、価値を創造し、業績を高めて来ました。


[本文]

今回も、大山健太郎さんのご著書、「アイリスオーヤマの経営理念大山健太郎私の履歴書」の中から、私が注目したところについて述べたいと思います。90年代後半は、デフレが進行していましたが、そのころからホームセンターなどでは、経費削減のために、正社員を減らしてパートタイマーに置き換えたり、さらにそのパートタイマーも減らしていきました。その結果、大山さんの納品した製品は、店に陳列されているだけになり、その状態を、大山さんは、「売り場」ではなく「置き場」になったと感じたそうです。

そこで、「置き場」の状態では、アイリスオーヤマの製品の良さが顧客に伝わらないと考えた大山さんは、2002年から、売り場づくりと接客を請け負う役割を持たせた「サービス・エイド・スタッフ(SAS)」という従業員を、アイリスオーヤマの負担によって無償で販売店へ派遣し、顧客の相談に応じながら製品を販売させたそうです。その結果、SASのいる店の売上は伸びていったということです。その一方で、販売店からは、「(SASを派遣するくらいの)余裕があるなら、まず、納入代金を下げろ」という要求があったそうです。

これに対し、大山さんは、「お客さまがこれまで購入しなかったものを買ってくれてこそ、限られたパイの奪い合いではなく、需要創造になる」と反論したそうです。すなわち、製品は、製品そのものだけに価値があるのではなく、顧客の相談にのり、適切な製品を売る機能にも価値があると、顧客が認めてくれているということです。大山さんはそのことを分かっていたから、販売店とは真逆の考え方をして、一見すると「コスト」としか捉えられないSASを雇い入れ、派遣したのでしょう。

アイリスオーヤマは、デフレが続く現在でも業績を伸ばしていますが、それは、値下げをすることだけが競争力を高めることになるわけではないという考え方をしているからでしょう。もちろん、価値を創造し、価格面以外の競争力を高めるということは、難易度の高い手法です。だから、多くの会社は、安易に値下げで競争しようとしてしまうのでしょう。でも、値下げ競争から抜け出せなければ、いつまでもレッドオーシャンでの消耗戦を続けることになるでしょう。価値創造に方向を切り替え、ブルーオーシャンに移ることができる会社こそ、競争力が高いということを、大山さんの指摘で改めて感じました。

2021/12/10 No.1822

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