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[要旨]

岩田松雄さんによれば、ドラッカーは、「優秀な人に対する報い方は、そうでない人に邪魔させないようにすることだ」と言っているそうです。したがって、経営者の方は、一所懸命に仕事に臨んでいる従業員の足を引っ張る不満分子がいる場合、会社を移ってもらうなどの対処を、責任をもって行わなければなりません。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「今までの経営書には書いていない新しい経営の教科書」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、従業員の評価の目的は、従業員を成長させることであり、そのためには、上司と部下の間でしっかりと話し合いを行い、評価の結果をフィードバックすることが大切ということについて説明しました。これに続いて、岩田さんは、どうしても自社で能力を発揮できない従業員の方について、岩田さんの考えについて述べておられます。

「ある職場で実績が出ない人材は、もちろん、別の職場に異動させて、何度か新しいチャンスを与えるべきです。それでも合わないのであれば、外の世界で本人が生かせる職場を見つけた方が、会社にとっても、本人にとっても、よほど幸せなはずです。その時は、もちろん、何らかのサポートをしてあげる必要はあります。『雇用は絶対に守る』という経営者もいますが、それは、本当にいいことなのでしょうか?そうでない選択を、従業員と経営者がお互いにしっかり話し合って決める、ということがあっていいと思います。

ドラッカーは、『優秀な人に対する報い方は、そうでない人に邪魔させないようにすることだ』という意味のことを言っています。優秀な人材が足を引っ張られることこそ、企業にとって大きな損失です。経営者は、それをしっかり踏まえておかないと、優秀な人材を失うことになってしまいます。不満分子が、やる気があり、一所懸命やってくれている人たちの足を引っ張ったり、モチベーションを下げてしまうのであれば、会社にとって見逃せない大きな損失です。そのためにも、経営者は腹を決めなければいけないこともあるのです。それは、経営者にしかできない仕事です」(197ページ)

今回の、自分の能力を発揮できない従業員の方に、どう対処すればよいのかということについては、私は正解はないと思っています。ただ、岩田さんは、ドラッカーの考え方を重視すべきだとお考えなのだと思います。すなわち、従業員の中に、ほかの従業員の仕事を邪魔するような人がいれば、それは、経営者が責任をもって防ぐようにしなければならないということなのでしょう。だからこそ、岩田さんは、「それは、経営者にしかできない仕事です」と強調しているのだと思います。

これは私の考えですが、もし、職場に他の人の仕事の邪魔をする人がいて、さらに、それを経営者が気づかないふりをして、何もしなければ、単に、真面目に仕事をしようとしている従業員の士気が下がるだけでなく、経営者に対する信頼を失い、業績に悪影響を与えるでしょう。このような職場の問題は、前述したように、100%正解という解決策はないと思いますが、少なくとも、経営者が職場環境の改善に関心がないというそぶりを見せたり、問題に気づいても見てみぬふりをしたりすることは避けなければならないということを、岩田さんは伝えようとしているのだと思います。

2023/6/9 No.2368

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