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正しい絞り込みは実践しながら設定する

[要旨]

標的顧客の絞り込みは、最初から正しいものを設定することは難しいので、実際に事業活動を行う中で、気づきを得ながら、正しいものを見つけていくことが妥当です。また、絞り込んだ結果、それが成功することで、その商品を水平展開し、標的顧客を広げることも可能になります。

[本文]

今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、80対20の法則による絞り込みの重要性についてご説明しましたが、これに続いて、鈴木さんは、絞り込みは、実際に事業活動をする中で気づきを得ながら行う場合もあるということをご説明しておられます。

「リクルートでも、結婚情報誌の『ゼクシィ』は、1993年の創刊当初は、男女の出会い・結婚・新生活を対象にしていたのを、結婚だけに特化して、売上が一気に伸びました。また、クーポンマガジンの『ホットペッパー』は、前身である1994年創刊の、『サンロクマル(360°)では、あらゆる業種の店を、薄く広くカバーして苦戦していたのですが、2000年の新創刊からは、飲食店中心に絞り込み、数年で中核事業に成長しました。

マーケティング上手のリクルートでも、最初からは思い切って絞り込めないというよりも、実際に活動していく中で、気づきを得て絞り込んでいくものだと言えるでしょう。絞り込んで、一点突破できれば、ホットペッパーはグルメ(飲食店)から、ビューティ(美容院・美容室・ヘアサロン)へ、ゼクシィは結婚から縁結び(婚活)へ、といった水平展開が可能です」(89ページ)

私は、この事例から学ぶことができることは、大きく2つあると思います。ひとつは、最初から正しい絞り込みはできないので、実際に事業活動を行いながら見極めていくことが大切ということです。引用した事例のリクルートでも、事業活動をする中で絞り込みを行っていったわけですから、日々、実践と検証を繰り返していくことが重要です。

これについて、最初から正しい絞り込みが分からないのであれば、絞り込みを行うことが無意味なのではないかと考えられなくもありません。でも、絞り込み自体は間違っておらず、どこに絞り込むことが妥当なのかが事前には分からないだけなのです。したがって、それを早く発見できるようにするためには、まず、仮の絞り込みを行うことから始め、仮説と検証のサイクルを速く回転させることが欠かせません。

2つめは、「一点突破」できれば水平展開ができるようになるということです。絞り込みを行うことは、標的顧客を減らすことでもあり、これは絞り込みを行うことを経営者が躊躇する要因にもなっていると思います。でも、引用の事例からも分かる通り、ホットペッパーもゼクシィも、認知度が高まった後は、水平展開できるようになります。このことからも分かる通り、最初から絞り込みをしなかった時よりも、いったん、絞り込みをしてから水平展開を行う方が、効率が高いと言えるでしょう。

2023/3/3 No.2270

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