見出し画像

コツコツとした努力は周囲を感動させる

[要旨]

ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人元社長の新将命さんによれば、ビジネスで成功する人に共通する特徴は、焦らない、あきらめない、怠らないの3つで、すなわち、コツコツと努力を続ける人の姿は、周囲の人々を感動させ、それが大きな力となって、組織活動の成果が高まるということです。そこで、コツコツと努力を続ける人は、必ず勝つ人であるということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人元社長の新将命さんのご著書、「伝説のプロ経営者が教える30歳からのリーダーの教科書」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、新さんによれば、会社の売上を拡大する前に、会社組織の習熟度を高めなければならず、そうでなければ、仮に売上が拡大に成功しても、それは単なる膨張であり、正しい成長ではないということについて説明しました。

これに続いて、新さんは、成功するためには、継続的な努力が大切ということについて述べておられます。「ビジネスでも、スポーツでも、学問でも、成功者に共通する特徴がある。それは、焦らない、あきらめない、怠らない、の3つだ。つまり、粘り強くしぶといということである。必ず雨を降らせるという祈祷師は、雨が降るまで祈りをやめない。成功するまでやめないことが、必ず、成功するための1つの方法でもある。コツコツと努力を続ける人の姿は、周囲の人々を感動させる。

人々の心を動かすことは大きな力となる。コツコツと努力を続ける人は、必ず勝つ人である。江戸時代末期の篤農家、二宮尊徳は、数々の廃村寸前の農村を復興させた、村落再生の実績を持つ人でもある。彼は、人心の荒廃した村へ赴任すると、翌日の朝から誰よりも早く田畑に出て働き、夜は誰よりも遅く家に帰り、家では仕事のための書きものと読書をして、誰よりも遅く床に就いた。その生活は雨の日も、風の日も、暑い日も、寒い日も変わることなく、毎日毎日、繰り返された。

働く意欲を失った村人も、尊徳の姿を見ているうちに、1人、2人と、その後に従うようになる。彼の行動が村人を感動させ、心を動かされた村人が少しずつ反省し、行動を改めたのである。彼の農村復興とはこうしたものだった。こうしたやり方で、いくつもの村を復興させたのである。コツコツと努力を続ける尊徳の背中が、村人の冷え切った心に再び火を点したのだ。人生とは、コツコツカツカツで生きて花を咲かせるものである」(175ページ)

新さんの、「コツコツと努力を続ける人の姿は、周囲の人々を感動させる」というご指摘は、多くの方がご理解されると思います。そして、この周囲の人を感動させるという働きかけは、論理的なものではなく、感情的なものなので、経営者の方が従業員の方からの共感を得たいという場合は、理屈抜きで実践するのみということになるでしょう。ところが、現実的には、社長がコツコツと努力を続けても、部下の方たちにはなかなかそれが伝わらないようです。

私がよくご紹介している、イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんでさえ、当初は一人で始めたトイレ掃除を、部下の方たちが手伝うようになったのは、10年くらい経ってからだそうです。ちなみに、部下の方たちが鍵山さんを手伝うようになる前は、部下の方たちは、鍵山さんを嘲笑していたり、鍵山さんがトイレ掃除をすることに反対していたこともあったそうです。それでも鍵山さんがトイレ掃除を継続することができたのは、鍵山さんが、「箸よく盥水(ばんすい)を回す」という考え方を大切にしてきたからのようです。

すなわち、「たらいのような大きな器に水をいっぱい入れて、箸一本で真ん中をぐるぐるぐるぐる回していますと、最初の間は箸しか回らないが、それをいつまでも、いつまでもやり続けていると、いつの間にか、だんだん水が回り始めて、大きなたらいのような水も全部回り始める」という意味のようです。社長の行動に部下たちが共感して活動する会社は強い会社だと思いますが、自社をそのような会社にするためには、鍵山さんのような粘り強く継続的な働きかけを欠かすことができません。むしろ、時間がかかる働きかけによってつくられる組織だからこそ、強い組織になるといえるのでしょう。

2024/11/1 No.2879

いいなと思ったら応援しよう!