経営戦略によって企業に魂が宿る
[要旨]
経営コンサルタントの遠藤功さんによれば、経営戦略とは、経営の意思であり、多様なステークホルダーとの約束です。さらに、どのような会社を目指すのか、どのような存在になりたいのかを意思表示し、株主や顧客というステークホルダーと約束するものだそうです。そして、会社は設立手続きを行い、登記をすれば、誰でもつくることができますが、経営戦略を練り込み、明らかにすることによって、会社に魂が宿ることになるそうです。
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経営コンサルタントの遠藤功さんのご著書、「経営戦略の教科書」を読みました。遠藤さんは、まず、経営戦略によって会社に魂が宿るということについて述べておられます。「ビジネススクールに入学されたみなさんは、これから経営に関するさまざまな知識を体系的に学んでいくわけですが、その柱のひとつが経営戦略です。といっても、経営企画部あたりに所属している方は別ですが、それ以外の多くの人にとっては、経営戦略というものは、日頃、あまりなじみのあるものではないと思います。
それよりも、マーケティングだとか、営業、生産管理、財務・経理といった、実務に直結する、機能別の知識を学ぶことにより、大きな関心があるかもしれません。確かに、そうした機能別の知識は実践に直結しますし、すぐに役立つことも多いかもしれません。それに比べると、経営戦略というのは、その重要性こそ、誰も否定しませんが、どこか漠然としていて、掴みどころがありません。建物や設備、人材のように目に見えるわけでもありません。
もちろん、経営戦略も、中期経営計画などのような『計画』に落とし込まれ、目に見える形として表現されることはありますが、それでもどこか漠然としたものであることには、あまり変わりがありません。しかし、それでも経営戦略は企業経営において最も重要な根幹部分です。理に適った経営戦略なしに、よい経営をすることはできません。経営戦略が不在だったり、その品質が低ければ、その企業は迷走し、成功を手に入れることはできないのでしょう。
端的に言えば、経営戦略とは、経営の『意思』であり、多様なステークホルダーとの『約束』です。どのような会社を目指すのか、どのような存在になりたいのかを意思表示し、株主や顧客というステークホルダーと約束するものが経営戦略なのです。企業は設立手続きを行い、登記をすれば、誰でもつくることができます。しかし、それだけでは、所詮、『箱』をつくったにすぎません。経営戦略を練り込み、明らかにすることによって、企業に『魂が宿る』のです」
私は、先日、ある経営者の方から、「わが社のような会社でも、経営戦略は必要なのでしょうか」という質問を受けたことがあります。でも、これについては、遠藤さんの説明を読めば、経営戦略が必要であるということはご理解できるでしょう。ちなみに、私は、経営戦略について、遠藤さんの説明とは、少し違う整理をしています。まず、会社の在り方や目指す目標などは、経営理念で示します。
さらに、その経営理念を、より、簡潔、かつ、具体的に宣言するものを、コミットメントと言います。そして、それを実現するための方法は、経営戦略で示します。その経営戦略にそった具体的な活動は、経営戦術で示します。その経営戦術などによって、いつまでに、誰が、何を、どこで、どれくらいといったことは、事業計画で示します。ただ、これらの言葉の定義は、厳密に定められているわけではありませんが、おおよその内容は一致しています。そして、繰り返しになりますが、これらの経営戦略がなければ、会社は魂のない状態になってしまいます。
2024/3/15 No.2648