見出し画像

自分が決めると納得感が大きくなる

[要旨]

ミスターミニットの元社長の迫俊亮さんは、同社社長時代に、権限をできるだけ現場に置くようにすることで、活躍する従業員がたくさん現れたそうです。それは、自分が実践する仕事は自分が決めたものであり、大きな納得感を得ているからと考えることができます。

[本文]

今回も、前回に引き続き、迫俊亮さんのご著書、「やる気を引き出し、人を動かすリーダーの現場力」( )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、迫さんがミスターミニットの社長だったとき、自ら育成したリーダーが決定したことにはほとんど反対をせず、最後までやり通す経験を積んでもらうことで、自立心を養ってもらい、リーダーとしてのスキルが高まるようにしていたということを説明しました。これに続いて、迫さんは、権限を、できる限り、現場に置くことが望ましいということをご説明しておられます。

「いまのミスターミニットのように、できる限り、権限を現場に置き、現場のリーダーたちによって自走する仕組み、僕たちは、『アップサイドダウンマネジメント』と呼んでいる。つまり、ピラミッドが逆さまになった『上下逆転マネジメント』である。組織のすべてが、現場をサポートするために設計されている。この新しい体制のもと、現場からは大活躍し、スターとなる事例が続出中だ。

彼らがモチベーション高く働いてくれているのは、きっと、『自分が仕事を進めている』、『自分が決めた』、『自分がやった』と、ハンドルを握っている感覚があり、アクションへの納得感があるからだろうう。納得感は、仕事を深く理解していることと、決定に関与していることの、2点から生まれてくる。よく言われる例え話だが、同じ『レンガを積む』という作業があっても、『城をつくる』という決定に関わった人と、『城をつくる』と知らされている人と、ただ、『レンガを積め』と指示された人とでは、納得感も、モチベーションも、まったく違ってくる。当然、後ろに行くほど、『やらされ仕事』になる」(164ページ)

この迫さんのご指摘も、ほとんどの方がと理解されると思います。そして、部下に対して、「早く、自律的に仕事をするようになって欲しい」と考えている経営者の方は多いと思います。しかし、その一方で、部下がなかなか自律的に仕事をしてくれないと考えている方も多いと思います。これは、私が、中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じるのですが、部下の方が自律的にならない要因の大きな割合を占めるものは、権限を委譲していない面があると思います。部下に対して、あまり権限を与えていない会社では、部下から見れば、「自分にはこれだけの権限しかないのだから、自分で動けるところはここまでだ」と、ある程度、仕事の範囲を限定してしまうことになると思います。

そして、社長とすれば、部下にあまり権限を与えてしまうと、間違った判断をしたときの損害も大きくなってしまうので、限定せざるを得ないと考えていると思います。しかし、それと同時に、部下に対して、自律的に動いて欲しいと考えているのであれば、例え方が失礼なことをご容赦いただきたいのですが、首輪をつないでいる犬に対して、遠くに投げたボールを拾って来るように望んでいるようなものです。ただ、このような矛盾した考えを、経営者の方が気づいていないこともあるので、もし、お心当たりのある経営者の方は、自社では、部下にどれくらいの権限を与えているのか、見直してみることをお薦めします。

もちろん、単に、部下に権限を与えるだけで、部下が自律的に仕事をしてくれるようにはなりません。そこで、私は、従業員の方の自律的な活動を定着させたいと考えている会社には、QCサークル(小集団活動)や、5S活動など、課題に対して自ら意思決定をして取り組む活動を行うことをお薦めしています。このような活動によって、少し時間はかかりますが、従業員の方の「当事者意識」が涵養されていきます。そして、迫さんが実践したように、当事者意識を持った従業員をどれだけ育成できるかが、競争力の高い会社にできるかどうかの鍵になると、私は考えています。

2023/10/20 No.2501

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?