時間の矢のヒント~「宇宙を解く唯一の科学 熱力学」
以前読んだ、時間に関する書籍の中に、時間の不可逆性について触れてあった箇所があった。
なぜ時間は過去から未来へと流れているのか。
それは、熱力学第二法則に従っているからである、と。
以来、熱力学をもう一度見直してみたいと思っていたところだった。
(上記の本だったか記憶が確かではないのだが)
今回読んだ本はこちら。
なんか煽情的なタイトルなのが気に入らないが、原題は”Einstein’s Fridge”、「アインシュタインの冷蔵庫」ということだ。
熱力学の興りから最新の宇宙論にいたるまでの関わりが綴られている。
一つ一つの章立ても短くとても読みやすい。
その中で、ウィリアム・トムソンという19世紀の科学者を取り上げている。
熱力学の祖の一人と言える人物である。
彼がその確立に尽力した熱力学第二法則とは、次のようなものだ。
熱が低温の場所から高温の場所へひとりでに流れることはけっしてない
教科書には、「エントロピーは増大する」と書かれている法則である。
この法則について思索を深めて1852年に発表した論文で、次のように考察したという。
この論文の中でトムソンは、19世紀半ばの物理学にとっては目新しい、不可逆性という概念に着目した。ニュートンの法則は可逆であって、不可逆性といった概念は含んでいない。(中略)この宇宙で起こる多くの事柄が一方向にしか進まないのには、れっきとしたわけがある。それはエネルギーが一方向にしか拡散しないことの表れであって、時間が過去から未来へと流れる原因でもある。トムソンは時間の矢を見つけたことになる。時間の矢は、拡散が進んでいない過去から拡散が進んだ未来へという一方向を向いていて、その拡散が済んでしまったら時間は終わるのだ。
なんだかさらっと書かれているのだが、すごいことではないだろうか。
ちなみに上記は全19章の内の6章に書かれてある記述である。熱力学にまつわる展開はこの後まだまだ続いていく。