近すぎる関係?~「バグダッド・カフェ」
映画にはいろんなジャンルがあるけれど、観る側の願望がそのまま描かれているような作品がある。それをそのままだと能がないので、いかに味付けして描くか。今回はそんな作品。1987年公開「バグダッド・カフェ」
最初は、カフェのおかみさんが怒りまくっていて、少々戸惑ってしまうが、中盤以降は至極安心して観られるような展開。こんなにうまくいっていいの?というくらい。
いろいろな来歴の人々が集まるカフェ。次第に互いを理解しあえてきて、いつくしみ合う。そこにいるのは客ではなく、家族。まさにユートピアではないだろうか。
でも、映画やドラマって、その「中」の物語の部分部分を切り取って映像として提供しているわけであって、それ以外の本当の素の状況はそれほど生易しいものではないのではないだろうか。
本作で言えば、ジャスミンが帰ってきて大団円と思われたとき、デビーがカフェを離れていく場面がある。曰く「仲が良すぎるわ」。
そう、実際にこんな密で近い関係はどうだろうか。少なくとも現代日本ではちょっと敬遠されてしまうだろう。憧れは憧れのままがよいこともあるのだ。
まあ、だからこそ映画の中だけで楽しみたい、ということになるのだろう。
うん、いい映画でしたよ。