現代につながるアメリカのお国柄~「群衆」
ゲーリー・クーパー祭りも佳境に差し掛かってきた。
名監督にも愛されたクープ。その一人がフランク・キャプラである。
「オペラハット」も好きだけど、今回はこちら。1941年公開「群衆」
汝、隣人を愛せよ。
ちょっとしたフィクションの風刺記事から生まれた架空の人物「ジョン・ドゥ」。彼のこの呼びかけが全米を席巻する。たちまち各地にジョン・ドゥ・クラブが立ち上がっていき、一大勢力に。
それを政治利用しようとする新聞社社長と対立していくが・・・
というお話。
こういう民間のクラブという発想、なかなか日本ではピンとこない。おかみの言うことに従ってきたという国民性の違いだろうか。
それにしてもこのクラブの集会の様は、今のアメリカでも全く同じものが観られる。
近年その政治的影響力の大きさが話題になっているメガチャーチである。
これはコンサートではない。一つの教派の集会である。
こういう教派がいくつもあり、その数で政治に大いなる影響を与えているのが今日のアメリカ。
他の宗教や中国を悪し様に言っているけど、アメリカもかなり宗教色の濃い国家なのである。それもけっこう偏狭なトーンで。本人たちは良いことをしていると思い込んでいる分、扱いに困ってしまう。
メガチャーチ自体は19世紀からもあったようだが、ここまで大規模になることを予見していたかのようなキャプラの慧眼には恐れ入る。
本作はクープとバーバラ・スタンウィック共演という点も注目を集めた。
スタンウィックはたしかに美しかった。クープも朴訥とした感じがマッチしている。
しかし、本作の一番の主役は脚本であったと思う。