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冬の稲妻/アリス Fuyu No Inazuma / Alice
中3の秋の文化祭でギター好きの友達たちとコンサートを開こうという話になった。
曲はカーペンターズがいいと主張したが、ボーカルが英語の歌詞を覚えられないと却下された。
結局当時流行っていたアリスにしようということになって、あまり気乗りしなかったが民主的にアリスに決まった。
引くときは引くよ私は。
ま、田舎だからね。
教室を借りて準備していると、1年先輩の高校生でブラバン部の人がドラムを運んできた。文化祭前日だったが、先輩がドヤ顔をしながらドラムを大音量でバカスカ叩いたので、職員室から柔道部の顧問の先生がすっ飛んできて「何をやってるんだ!」と怒られた。
しかし結局ドラムを叩ける人がいなくて本番ではステージの横に飾っておくことにした。
自分はエレキギター担当でE藤君が12弦のフォークギターを買って持ってきた。K田君がフォークギターでM地君がミキサーと録音係に決まった。M地君は人前に出るタイプではなく、こういう地味な仕事を引き受けてくれるなかなか優れた人物で、結局官僚になった。
当時PAなどというものの概念は無く、エレキギターの音は持ち込んだステレオセットのカセットテープレコーダーのRECに入れてステレオのスピーカーから音を出した。誰かがエコーも持ってきたので繋いだ。
本番が始まり5曲ぐらい演奏したが緊張と興奮でボロボロだった。
後で録音を聴いたらライン録音の失敗したエレキギターの音だけバカでかくて、ボーカルとフォークギターの音がメチャクチャ小さかった。
そりゃそうだ。
しかも風呂場の中みたいにエコーがかかりまくっていて今聞くとかなりサイケデリックなのだった。
コンサートは結構後輩の女の子が見に来てくれて(これこそが最も大事なことだった)盛況だったが、舞い上がってさんざん練習したにもかかわらずコードを忘れ、ソロを失敗し、メチャクチャになってしまった。
思い出したくない人前デビューとなった。