#5-2 振り返りの中にこそある子供たちのつぶやき【教員インタビュー: 中村宏美先生 #1】
みなさんこんにちは。リフレクションメソッドラボラトリー事務局です。リフレクションメソッドラボラトリー(以下RML)では「MAWARUリフレクション」というプロジェクトを行っています。
MAWARUリフレクションは、「リフレクションによる個人の気づきが周囲に循環し、社会を変える」をテーマに、教育にリフレクションを取り入れる活動を2016年から続けているプロジェクトです。
本記事では、MAWARUリフレクションで新しく始めた「教員インタビュー」の記事をお届けします。教育現場で、先生がどのようなことを考えているのか、とても面白い内容になっていると思いますので、ぜひご一読ください。
第5回の先生は、兵庫県で中学校教諭をされている中村宏美さんのインタビューです!いつものようにPodcastも用意していますので、ラジオ代わりにもぜひ聴いてみてくださいね。
リフレクションの実践、手応えについて
生井:リフレクションに関してどのような実践をしているか教えていただければと思います。あるいはその実践をされるようになって何か手応えを感じているとかそんな体験があれば併せてお伺いできればと思うのですが、いかがでしょうか?
中村:そうですね。先ほどお話させていただいたように、毎時間それこそ、対話でずっと授業が進んでいるんですけど、子供たちには今日のお話の中で、自分がわかったこと、まだ疑問に残ってること二つをリフレクションしてもらっていて、ずっとやってもらっています。
主にやってるのは、小説の教材が多いです。説明文のときも段落構成とか、子供たちがずっと対話を積み重ねながら考えているんですけど、リフレクションシートは書きますが、基本的には、(説明文の時は)話の中の展開や、皆で話をしたことを書いてることが多いからです。
小説、物語とかの教材になると、まだみんなの前では話をしなかったけど、「思っていることがある」みたいなことを子供たちが書いてることがたくさんあります。個々のグループ(二、三人)で話をしているので私が全ての話を聞き取れるっていうことはできてないんです。
ですから、子供たちの話はどういう展開で進んでたのかなっていう流れがそのリフレクションシートを読むことによってわかります。ここの班は近寄って聞いたときにはこういう話をしてたのは知っていたけど、こんな話もしてたんやなっていうのがそのシートを見ることによって把握できるという効果はあるかなと思います。
また、私自身が知ることで次の授業の展開を考える際、子供たちが、今一番疑問に思っているのはここだなと、私が目指したい主題との繋がりを考えるときに、子供たちがもってる疑問の中とか、わかったことのどれを全体に共有しようかなっていうのをリフレクションシートを読みながら考え、次に発表させる子どもを選別していました。
それをもとに授業の最初に全体で共有します。お互いの話を聞いて、子供たちも「なるほど、あれはそんなふうに思っていたけど俺と同じやな」とか、「あれは、どういうこと?」っていうのをその時間に焦点を絞って話をしていくので、その日の話の論点を絞るため何か話題提供みたいな感じで、前時のリフレクションを子供たちに共有させていました。
でもそれをもとに話するかしないは子供たち次第なんですけど、大抵は共有した話で「あんなこともあるんだとか、いや俺らも調べよう。」「俺らと同じことを思っているな。」「いやそんなこと気づかへんかったわ。」とか。
というのが、子供たちの中で一斉に話が始まるので、どこにピンと来てるかは、全部はまだ把握できてないんですけど、でも大体もっていきたい流れのところに論点が絞れるようなリフレクションの紹介の仕方をちょっと、こっちで流れをファシリテートするって意味ではやってました。
生井:子供たちが授業の中でいろいろ振り返り、みんなの前でも出てきてないようなことがリフレクションシートを使うことで表出され、先生が子供たちに返すことでそれが刺激になって、また授業が対話的に進んでいくっていうような、そんなふうに使われてることで手応えを感じられているっていうことかなというふうに思ったんですが、そんな感じでしょうか?
中村:はい。そうですね。
心理的安全性、『聴く』を大切にすることが授業の変化を生む
山下:先ほどそのリフレクションシートでわかったことと疑問に残ったこと、この2点を書かせるということで、おっしゃってくださったんですけど、最初はあのそんなに書かなかった子が段々びっしり書くようになってきたっていうところのエピソードもあったと思います。量が増えるっていうことと、質が変わってくるとかっていうところは、何かきっかけがあったりしますか。何かその先生の手立てをこうしたから深まってきたとか量が増えてきたとか、何かその辺の何かやられてることって何かあったりしますか?
中村:気をつけてたのは子供たちが共有するときにはひたすら聴く。そこは、P4Cの考えと一緒なんですけど、そのときの私は佐藤学先生の学びの共同体の手法をちょっと意識はしていました。子供たちの発言は全員で聴く。そこで質問を投げかけない。誰かが発言してる人に対してそれはっていう質問は投げかけない。
聞こえなかったらもう1回言ってくださいうんですけど、そのときの発言に関してすぐに質問投げかけない。否定のことを言わない。っていうのは、決めていました。
P4Cでも聴くことが重要だということが指摘されていますけど、その手法を私の中では意識していました。ですから、例えば、一問一答で答えるような授業では全然言えない子も、何かとんちんかんなことを言っても、国語の授業ではみんながうんうんとか言いながらその子の話を聞いてくれる。安心感がやっぱり良かったのかなっていうのは、P4Cの本を読んでも、学先生の本を読んでも、その否定の言葉がけをしないことだっていうのは実際書いてあるんですが、実際自分がやってみてもやっぱりそうやったなっていうのは、すごく実感の中でありました。
だから学校に来れなかった子が、国語の時間には来てました。発表もめちゃくちゃ自信を持って、何かその子が発言すると、「すごいな」とか言われたりしていたので余計に自信もって、「もう楽しいわー」って。国語がないと来てませんでしたっていうようなこともあったのですが、それがきっかけで、学校に来てました。他の授業でも例えば道徳なんかだと、答えがない問いに対して、道徳でのクラス全員の発言がすごく変わりましたっていうのは、担任の先生にも言われるようになりました。 だから、国語の授業で自分の発言が認められる経験が他の授業にも生きてきて、答えることを恐れないようになっていったかなっていう実感はあります。
生井:何か今の話を聞いて心理的安全性っていう言葉が浮かんだんですけどどんな意見を言ってもあの多様な意見で自分と考えが違っても聞いてもらえるとか、言える風土があるとか、なんかそんな授業の雰囲気なのかなっていうのなんか思い浮かべました。
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本記事はここまでです。更新は毎週木曜日です。
第3回目もお楽しみに!
【中村先生インタビューの記事】
# 5-1 中村先生インタビュー1
# 5-2 中村先生インタビュー2(本記事)
# 5-3 中村先生インタビュー3
# 5-4 中村先生インタビュー4
インタビュアー 生井・山下
執筆:山下