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木村は5000円で割と本格的なキューボックスを手に入れた
今日のnoteは長いので、結論だけ読みたい人は、最後の「5000円の謎のキューボックス、ついに完成」という段落まで読み飛ばしてください。
みんながキューボックスと思っているのは「子機」
THE FIRST TAKEの動画を見て、「あの手で触っている箱みたいなのはなんですか?」とよく質問があるらしいのですが、あれはキューボックスというものです。
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キューボックスとは、レコーディングスタジオで演奏者が手元でヘッドフォンの音を調整するための専用の機械で、音量を変えたり、特定の音(クリックとか自分の声とか)のバランスを調整したり出来ます。
レコーディングスタジオには必ずあり、大変便利なので自宅にも導入したいと思うクリエーターもいますが、皆さんがキューボックスと思っているのはあれは実は「子機」でして、写真には映らない場所に「親機」も存在するのです。なのでキューボックスシステムというのは、ある程度大掛かりでコストもかかるため、個人で導入するにはそれなりにハードルのある機材です。
個人スタジオ向きのDAW直結型、D-sub 25接続のキューボックス
しかし、自宅や小規模なスタジオでもキューボックスを気軽に導入したいという要望はあり、DAWで使用するI/Oに直接接続するタイプのキューボックスも存在します。
CONISISのスタジオキューシステム「COM1805R」や、
oz-designのモニタリングシステム「OZ-801 / OZ-802 / OZ-804」などがそれにあたります。
【OZ-801/802/804 Monitoring System】
— oz design 機材メーカー (@oz_design_pds) September 26, 2021
プライベートスタジオの新スタンダード、高音質CueBoxの登場。
oz design websiteと宮地楽器様オンラインでの同時発売。
宮地楽器様のサイトではアナログのブレイクアウトケーブルを付属していますので、XLR入力にも対応出来ます。https://t.co/FxgXxFtn2L pic.twitter.com/sTqtLvHajc
これらのキューボックスは「親機」が存在せず、Avid製のオーディオインターフェイスやFocusriteのRedシリーズなどに搭載されている、D-sub 25規格のアナログ出力端子に直接接続するのが特徴です。
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かさばる親機が存在せず、スモールスタジオでも導入しやすいことから、これらのDAW直結型のキューボックスは最近人気で、私もいつか導入したいものの一つです。ただし、1台10万円以上はしますので、それなりに決意は必要です。
脚(あし)だけ入手してキューボックスを自作したい
さて、私も自分ち(家)にもキューボックスが欲しいと思う一人ですが、10万円以上はすぐに手が届かないので、ヘッドフォンアンプは手持ちのものを使いつつ、キューボックス独特のあの「脚」(あし)だけをなんとか入手して、キューボックスを自作できないかと考えておりました。
そんな中、オークションに面白そうな物を見つけました。ジャンク品とのことですが、「これ、脚(あし)だけ使えんじゃね?」と。
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この脚(あし)に5000円出すべきか結構迷ったんですが、思い切って入札したらあっさり落札してしまいました。
謎のキューボックス使えんのか?
そんな訳で、我が家に届いた荷物がこちら。
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そう、これもキューボックスなんですが、状態不明のジャンク品ということで、使えるのかわかりません。まあ、脚(あし)目当てに入手したので、キューボックス部分が壊れていても構わないのですが、音が出るかどうか試してみることにしました。
専用ケーブルを自作(D-sub 25側)
この謎のキューボックスに音を入力するために、専用のケーブルを自作することにしました。上で紹介した、DAW直結型のD-sub 25接続のキューボックスを目指し、切断されたケーブルをD-sub 25端子に作り変えます。
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専用ケーブルを自作(JAE SK-19側)
問題はケーブルのこちら側です。一見、CURRENTやADgearのキューボックスと同じ端子かと思いきや、ピン数が違います。
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CURRENTやADgearのキューボックスで採用されているのは、カナレのマルチケーブル/コネクタボックスなどでも採用されている27ピンのコネクタでして、私の眼の前にあるのは19ピンのコネクタ。一回り小さいのです。検索すると既に生産中止品で手に入らないコネクタでした。
このオスとメスが挿さった状態で届きましたので、そこが繋がって使用されていたのかと思いきや、中の配線を調べると全然ピンアサインが合いません。
仕方ないので、リバースエンジニアリングというほどたいそうなものではありませんが、本体を開けて、どこがどこに配線されているのかをよく観察してメモに書き起こし、同時にWebで公開されている、CURRENTとADgearとSTUDIO EQUIPMENT各社のキューシステムの仕様書やコネクタ結線表を読み解いて、「こう繋いだら使えるんじゃないか」という配線を仮説して、そのとおりに一度繋いでみることにしました。
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これはかつて子機として使用されていたものなので、外部から電源を供給する必要があります。何ボルトを供給すればよいかわかりませんでしたが、「おそらく24Vだろう」と予想。
一度、仮セッティングで音出しの実験をしてみたところ、見事成功。ちゃんと音が鳴って、使えることがわかりました。
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謎のキューボックス専用ケーブルが完成
そんな経過を経て、完成した謎のキューボックス専用ケーブルがこちら。D-sub 25端子とキューボックスを接続し、かつ外部から電源を供給できるようになっています。
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電源用のコネクタは現在(仮)の状態で、HRS(ヒロセ電機)のロック式のコネクタを取寄中。届き次第交換します。
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かつては、親機(パワーサプライ)と子機(キューボックス)とで組み合わせて使用されていたキューシステムを、DAWに直結し、キューボックス単独で使えるようにしました。
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清掃、ネジ締め、そしてジャックの交換
音が鳴ることがわかったので、今のうちに出来ることだけやっておきましょう。ヘッドフォンを挿すための4箇所のジャックは、消耗が激しかったので、4つとも新品パーツに交換することにしました。
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消耗が激しかったジャックパーツは、ネジの溝が崩壊し、中にべっとりと接点復活剤がスプレーされていました。ベタベタするだけでホコリも付着していいことないので、そんなのかけないで…。
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キューボックス本体は、再塗装しようかと思ったのですが、この文字なども味があるので、清掃だけしてそのまま使うことにしました。
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5000円の謎のキューボックス、ついに完成
長らくおまたせいたしました。オークションで5000円で入手した謎のキューボックス、ついに復活です。
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アースデコ調のツタ植物を模したようなスタンドの支柱には、ちょうどケーブルを掛けることが出来ます。
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このキューボックスの機能を説明すると、L, Rと書いてある左端の2本のフェーダーは2Mixの音量を調整するフェーダーです。続く1, 2, 3, 4, 5と書いた5本のフェーダーは5ch分の単独チャンネルです。歌やクリック、個別の楽器などをルーティングして、混ぜてモニターすることができます。Head Phoneというフェーダーで最終的なヘッドフォンのボリュームを調整します。
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1~5チャンネルのフェーダーの上についている5つのつまみが肝です。これはPANの切り替えスイッチで、L(左), C(センター), R(右)をカチカチっと切り替えて、単独チャンネルのパンニング(定位)を変更することが出来ます。
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音響ミキサーに付いている可変ノブのPANポッドではなく、3点のスイッチです。これは、クリックを片側に振ったり、ギターをダブリングする時に反対側に振ったりなど、レコーディングに慣れている方には大変便利な機能です。
録音の時には、生音を聴くために、ヘッドフォンの片方を外して演奏することもありますのでね。CURRENTやoz-designのキューボックスにも同じ機能が搭載されています。
電源ケーブルが無いので、キューボックス本体から生えているケーブルは1本のみ。これは非常に取り回しがしやすく、近くにコンセントが無くても使えて便利です。
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接続は、今どきのトレンドを考えて、D-sub 25端子にしました。
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将来的にCONISISやoz-designのキューボックスに買い替えたとしても、そのまま使用できます。
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肝心の音ですが、中々パワーが有り、ヘッドフォンをドライブしている感がひしひしと感じられます。モニターらしい音です。音数が少ない曲なら、L, Rを使わずに単独チャンネルだけで主要音を送って、手元で自分でミックスしても気持ち良いかもしれません。
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ルーツを知りたい
いったいこの謎のキューボックスは、誰が作ったものなのか?どこのメーカーのものなのかはわかりません。
なんとなく見た目から、CONISISかN-Toschあたりの日本のガレージメーカーが数十年前に作ったものではないかと想像していますが、詳細はわかりません。
どこかのレコーディングスタジオで実際に使われていたものなので、「見たことある」「作った人を知っている」「俺が作った」という人は、ぜひご連絡をいただければ嬉しいです。
回路を見てもどうなっているのかわからない部分がありましたので、教えて欲しいです。
![](https://assets.st-note.com/img/1663466841078-bC7LAwoeaS.jpg?width=1200)
2022/9/19追記 ルーツ判明
家具調の装飾が施されたこのキューボックスは、山梨県小淵沢のリトルバッハスタジオで使われていたものであることが、リトルバッハの元エンジニアさんによってほぼ特定されています。詳しくは本記事のコメント欄をご参照下さい。
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