半世紀たってわかったこと
2月も終わり,、3月になると、寒さのなかにも降り注ぐ光に少しずつ力強さが増しているように感じます。そして、春の初めは私にとってワクワクと心が弾む特別な時期でもあります。
幼い頃はその日が近づくのが楽しみでなりませんでした。そうです、3月3日の桃の節句、おひな様の日。白黒の写真の中に、ウールの着物を着せてもらい、おひな様の前でニコニコと嬉しそうに笑っている私がいます。
楽しみだった一大イベント
ひな祭りは私の大好きな一大イベントでした。ひな祭りの翌日が私の誕生日ということもあり、きっと誕生日のお祝いの記憶と相まって嬉しかった記憶が強く残っているのだと思います。
なにしろ半世紀!も昔のことなので、ひな祭りの日にどんなお祝いをしたかはまったく記憶にありません。ただ、ひな段の上に屏風や行灯を置き、説明書に従って間違えないようにおひな様を一体ずつ飾っていく作業自体もワクワクして楽しかったことは覚えています。
時々、お爺ちゃんの右大臣の首や手がもげてしまい、慌ててくっつけたり(今から考えると結構シュールな光景です。なぜだか右大臣だけあっちが取れたりこっちが取れたりと、ガタがきていました)。
三人官女や五人囃子は持ち物がそれぞれ違うので、説明書を見て同じように並べるのがなかなか大変でした。
ちなみに、男雛と女雛の並べ方(どちらが左あるいは右にくるか)は、地方や時代によって異なるようですが、私の雛飾りはこの写真と同じ並びでした。西洋式ルールに則っていたということでしょうか。
こちら、内裏雛についての説明と、雛人形の飾り方の説明です。
半世紀のもやもや
そして、この半世紀ほど、ひな祭りに関してもやもやと気になっていたことがありました。それは「ひな祭り」の歌(正確に言うと、「うれしいひな祭り」)の歌詞。3番の「すこし白酒 めされたか あかいお顔の 右大臣」という箇所でした。
「うれしいひな祭り」 <1番>
あかりをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ 桃の花
五人ばやしの 笛太鼓
今日はたのしい ひなまつり <2番>
お内裏様と おひな様
二人ならんで すまし顔
お嫁にいらした 姉様に
よく似た官女の 白い顔 <3番>
金のびょうぶに うつる灯(ひ)を
かすかにゆする 春の風
すこし白酒 めされたか
あかいお顔の 右大臣 <4番>
着物をきかえて 帯しめて
今日はわたしも はれ姿
春のやよいの このよき日
なによりうれしい ひなまつり
子供のころから、白酒とはきっと甘くて美味しいものなんだろうな~とは思っていたのですが、改めて考えるとなんだろ? 甘酒か? ほんとに?
ご存じの方も多いかと思いますが、甘酒には2種類あります。
米麹を使った甘酒、そして酒粕の甘酒です。米麹を使った甘酒はアルコールを含まないので、右大臣の顔が赤くなるはずはない。では、酒粕を使った甘酒なのか? もちろん、子どものときにそんなことを知る由もありません。
それで、今回調べてみたところ・・・
「歌に登場する白酒は甘酒ではない」ということがわかりました。まったく別の飲み物、なんと分類はリキュール。
「白酒」とは、みりんや焼酎などに、蒸したもち米や米麹を入れ、約1ヶ月熟成させたものを、軽くすりつぶして造ったお酒です。色味や質感の似ている「甘酒」は、ご飯やおかゆに米麹を混ぜて保温し、米のデンプンを糖化させたもの。米麹から造る甘酒には、アルコールがほとんど含まれていないので、「白酒」と「甘酒」の違いは明確ですね。(SAKETIMESより)
出典元はこちらです⬇️ ひな祭りの起源なども書かれていて面白いです。「大蛇をお腹に宿した女性が白酒を飲んで大蛇を追い出すことができた」というのはいったい??? 白酒がありがたいものだったというのはわかりますけどね。
白酒が何かがわかったところで、気になるのはどんなお味かということ。
飲んでみました、いや舐めてみました
さっそくアマゾンで取り寄せてみました。ジャジャーン。
ふたを開けたらこんな感じ⬇️
とーってもトロっとしています。グイグイ飲めるものではありません。「飲む」というよりは、お酒屋さんのHPにも書いてある通り「舐める」。そして、甘い! 砂糖や甘味料が入っていなくてこれだけ甘くなるのか!とびっくりするほどの甘さです。でもアルコール分は8%とビールよりもはるかに度数は高い、これは子どもには飲ませられない。右大臣が酔っぱらうのもわかります。
半世紀がたち、ようやくひな祭りに関するもやもやが解決してスッキリしました。
懐かしがっていたのは
あんなに大好きだった私のおひな様たち、てっきり実家の押し入れに眠っているものだと思っていたら、先日、母に「おひな様?家に置いておいても仕方がないし邪魔やん。とっくの昔にお寺に納めて処分したわ」と言われてショックを受けました。
遠い昔、今の私よりずっと若かった母と、そして今は亡き父と一緒に楽しんだひな祭り、私の中ではノスタルジックな甘い記憶として残っていますが、懐かしんでいたのは私だけだったようです。ひどいな、お母さん。