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Twitter投稿詩

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記事一覧

詩 『フナと亀』

詩 『フナと亀』

【Twitter詩】2022.2.20投稿

苔まみれの水槽にはフナが永く生きていた
だが死んだ
私はもう確かめないだろう
死んでいるのだから
この時
緑亀をかかとで潰した
首をもたげじっとしているが
この涙に 苦しみは与えられない
死んでいるのだから

フナも亀もいつどこで死んだのか
あれから私たちは生きているのか

(画像  ヘンリーウォリス「石割の人」)

詩 『詩人の行列』

詩 『詩人の行列』

【Twitter詩】2022.4.4投稿

詩人の行列が月光に撓んでいる
私を導こうと
脚をぽつぽつと運んでおられた
病持ちのため
雲に霞み
雷鳴の誘いも聞えない
弛まず彼方へ昇って行く
指を震わせ
極星を示されている
渡り着けるでしょうか
あそこに落ちた塊は
誰なのですか
今宵あの顔を必ず
見なくてはなりませんか

詩 『花は、いつも正しく、咲くだろうか』

詩 『花は、いつも正しく、咲くだろうか』

【Twitter詩】2022.4.17投稿

花は、いつもただしく
さくだろうか
春は、いつもただしく
えむだろうか
鳥は、いつもただしく
とぶだろうか
人は、いつもただしく
なくだろうか
私は、いつかただしく 
しぬだろうか

詩 『春のひとみ』

詩 『春のひとみ』

【Twitter詩】2022.3.13投稿

まっすぐな心と暖かい瞳を持った春が
雲からにらんできた
私を助けてくれたのは
あなたですか、と泣いていた
初めを思い出すことができないので
さいきん苦しかったのだ
私の悲しみを受けて
歩調を合わせて
ようやく躓いて
すべてを忘れたあなたの蒼いかげ
春のひとみと
まだ少しゆれる

詩 『母空の夜』

詩 『母空の夜』

【Twitter詩】R2022.5.5投稿

夕べぼくは母さんの空を
ほんの少し飛んだ
町の人ぜんぶ遠くに浮かんで
母さんになっていた
みじかい月夜へむかった

 いただきの光が
 うす影の何かをつれてにじってきた

天いちめんの母さんは
ぷつぷつなくなった
とっても胸にきた
サヨナラがはなのおくにきた
ぬれたあのまなざしを
帰ってきたよとさがしつづけた

夜明けに降りて

詩 『天光一輪』

詩 『天光一輪』

【Twitter詩】R4.4.19投稿

あの花はなんていう花ですか
ああやって
春風にいいよられている花は

休日の果ての
嘘の私
企みにまといつくあお空
余命が療した一つぶの窮鳥

あの雲は
なんていう雲ですか
ああやって剣の光を刺している雲は

生きてゆきたいと満面で聞き
河飛ぶ麒麟のボリュウムを高らかと挙げ

天に向かわせ

詩 『千夜の骨』

詩 『千夜の骨』

【Twitter詩】2022.5.15投稿

きのう仕事で背中を強打して
私は似せ詩人になれた
肋骨がへし折れたのかも知れないが
定時まで働いた
夜中は疼きで寝返りできなかった
姿勢を変えるごとに
私より前に
孤独に力つきた夥しい数の亡者が
逆さまのさみしい目をして
次々と脇腹の小骨を噛み砕いた
痛、痛、、と明けまで縮んだ

(画像 「奈落の娑婆地獄絵図」)

一行詩 『2022年初夏』

一行詩 『2022年初夏』

2022年初夏 地平の陽のしっぽに詩人は悲しく泳ぎだす

2022年6月3日(金)  詩の朗読と本の野外フェス 『POETRY BOOK JAM』にて、平川綾真智さんに朗読していただきました。
ありがとうございました。

詩 『命のとり』

詩 『命のとり』

【Twitter詩】2022.8.13投稿

私はなんて汚いこころだろうか
なんてまずしい言葉だろうか
けさはすずしい風が吹いているのに
いのちの神が鳴いている
天のうたに目をいたむ
なんて悪いかんがえになったのだ
暑さにしんどいだとは
お前はどうしたというのだ
働けてもう働きたくないとは
お前は 前のお前にまた迷うたのか

詩 『いつしかみんな』

詩 『いつしかみんな』

【Twitter詩】22.1.25投稿

いつしかみんな
その時を必死になって
生きるために手を取り合い
くるしみをわかち合う日がくるだろう
それが人間の姿だというように

信じていたい
星の数をかぞえ
たたずむこの日々が終わり
新しい朝日をあびる時がくることを
それが人間の姿だというように

こごえるような
長い冬がおとずれ
ひとつの灯を見つけようと
本当の声をかけあう日がくるだろう
それ

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詩 『誰にも負けない』

詩 『誰にも負けない』

【Twitter詩】2022.2.4投稿

誰にも負けない 勇気がほしい
約束のない 言葉がほしい
風が吹いても つぶれぬような
強くがむしゃらな  心がほしい

いつでも笑える 顔になりたい
いつでも泣ける 顔になりたい
楽しい時に かがみをながめ
むこうのあいつと いっしょに笑いたい

お金で買えぬ 安らぎがほしい
死ぬより長い 安らぎがほしい
きのうも今日も 明日も捨てて
どこにで

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詩 『明日生まれたらええから』

詩 『明日生まれたらええから』

【Twitter詩】2021.12.27投稿

ぼくいちねん
頑張った
怖い病気になってしもうて
からだがあっちこっち
おかしいなってん
何回もひとりで
しんどい検査いってん
劇薬飲んだり打ったり
吐いたり下したり
よごれたお腹をながいこと
個室でひねってん
アホがないようなるまで
がんばった

もの食べられるんか
あったかい服きとき
なおったに見えるなア
よかった
よかったなア
来年生まれたらえ

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詩 『病になって』

詩 『病になって』

【Twitter詩】2021.12.10投稿

白い女がくり返し病の血を抜いた
私の腕はくびられ
膨張したまっ青の管から
透明な筒へ溢れ出た
肌の白い女

病になって 楽になった
病になって 助走した
病になって 死を考えなくなった
病になって 人が人のかたちに滲み現れた
病になって 黒い病が、
消えた
恐る恐る
空を仰いだ

詩 『童顔とブラシ』

詩 『童顔とブラシ』

【Twitter詩】2021.12.31投稿

寒い夜遅く
自転車で銭湯に行った
浅い湯船で棒立ちの 胸毛のでっぷりが
聞き取れぬ挨拶をほがらかに投げてきた
俺は答えず
ああ寒う、と湯気に紛れて目をそらし
しばらくぬくもった
鏡に座り己に陶酔しはじめ
シャワーをかぶり ブンガクテツガクシソウ巡らせ
冷えた頭皮をもんだあとシャンプーブラシを手さぐりした
身の回りにはなかった
犯人を曇る眼で追うたら向

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