きりぎし(短編小説)4/4
(昭和世代 或る夏の夜の夢)
長く生々しい無気味な夢からやっと私は逃れ出た。
我に返ると、川沿いの停留場のベンチへ横になっていた。空も晴れ上がっているし、バスを待つらしい数人の男女も、なごやかな談笑の最中で、そこには田舎特有の大らかな空気が醸されていた。妙齢の女性もいたが、おかまいなしに、私は泥まみれの衣服を着替えると、出発する準備にとりかかった。準備といっても、荷をくくり、ジュースを買って飲んだだけである。バイクにまたがり、すぐに降りた。そうして、のろくさと車を押し