あの日誓った友情は #5
いよいよサツキの結婚式。
ドレス姿がとても綺麗なサツキ、誠実そうな旦那様の隣で幸せそうに微笑んでいた。
サツキを見ていたら、出会った頃からの思い出がたくさん頭の中に浮んできた。
それは自然と5人の思い出となる訳で。
そして、今微妙なバランスで辛うじて保たれている今の5人。
本当なら、4人揃ってこの場にいて、サツキをお祝いしていたはずなのに…。
色んな感情が押し寄せてきて、私は周りの人達が苦笑するくらい号泣していた。
「カスミ泣きすぎ!笑」
二次会は盛大には行われず、サツキ夫妻の新居に数人がお邪魔してささやかな飲み会が行われた。
サツキの地元の友人は、久しぶりに会う友達が遠方から来たんだから、とサツキを私の隣に座らせてくれて、やっとサツキとゆっくり話せる時間を迎える事ができた。
「だって…サツキが幸せそうで嬉しいんだもん…ウゥゥ…」
「わかったから!泣くな泣くな!笑」
ケラケラ笑ってたサツキがふと真顔になった。
「カスミ、こんな遠くまでホントありがとね。ウェルカムボードも素敵だった」
「ううん、友達なんだから当然、どこまでも行くよ!…でも…みんなも来れたら良かったのにな…」
私は目を伏せる。
「仕方ないよー、カエデは結局今もまだ帰国してないし…」
「キキョウはなんで欠席になったの?何て言ってた?」
「うーん、なんか仕事の予定が入った?とか」
「2ヶ月後の仕事の予定…ね…」
「まぁ、なんか大切な仕事なんだよきっと」
「アオイは?」
「アオイはLINEしても既読スルーだしさ、招待状の返信にも何も書いてなかった」
「なにそれ、失礼すぎない?そもそも、あの子最近変じゃない?」
明らかに不機嫌になる私を宥めるように笑うサツキ。
「色々あるんだよ、きっと。生きてたらさ」
「アオイ、ウェルカムボードの話をした時、自分は別にお祝い渡すからって断ってきたんだけど、何かお祝いあった?」
「…」
サツキは何も言わず、ただ笑ってた。
「ねぇ、サツキ。私だけなのかな、あの頃の5人に拘ってるの」
「?」
私、5人の関係が大好きで心地良かったの。
だけど、社会人になってみんな仕事も住むところもバラバラになって、なかなか会えなくなって。
でも、私はみんなあの頃の気持ちのままだと思ってた。
結婚しても子供ができても、おばあちゃんになっても、ずっと5人は変わらないと思ってた。
でも、最近違うなって感じる事が多くて。
なんか、私だけあの頃から変わってないのがバカみたいだなって…。
吐き出すように一気に話した私にサツキは言った。
「大人になるってそういう事なんじゃないのかなって私は思うよ?」
私はサツキの目をジッと見つめた。
「みんなそれぞれの環境で生きていて、人間関係も広がるしさ、あの頃のままって訳にはいかないよ」
わかってる。そんなのはわかってる。
「だからって、友達のこと蔑ろにしていい訳じゃないと思う。アオイもキキョウもおかしいよ、あの態度は」
「…ねぇ、カスミ。カスミも変わっていいんじゃない?」
「?…変わる?」
ポカンとする私にサツキは微笑んだ。
「みんなが変わったって悲しんだり腹が立つのは、カスミ自身が変わっちゃいけない、あの頃のままでいなくちゃいけないって思いに縛られてるからじゃないかな」
私が縛られてる?
「変わっちゃいけないから自分は変わらず頑張ってるのに、なんでみんなは変わるの?私だけ頑張ってバカみたいじゃんって考えちゃうんだと思うよ?」
…ああ、そうなのかな。
「私も5人の関係は心地良かったし、みんなとずっと友達でいたい。でも、考えてみて?元々5人全員が全く同じ考え方で、お互いの全てを許せてきたって訳でもなかったじゃない?分かり合えない部分ってのは最初からあったし、それはきっとこの先も永遠に分かり合えないものだよ、きっと」
…やっぱり私だけが拘ってて、私の理想を勝手にみんなに押し付けていただけ?
「アオイに対してもキキョウに対しても腹が立つなら、腹を立てている自分を認めてあげて、もう無理して頑張らなくていいよ。アオイもキキョウも私達に対して頑張るのをやめたんだからさ」
ポロ…ポロポロ…
私の目から零れる涙を見て、サツキは黙り込んでしまった。