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一ノ瀬 織聖
2018年11月30日 23:42
White NOise #02 檸檬色が僕の目を刺す。朱色の血が混じり合い、橙色に足下を染めた。僕達はただひたすらに、青灰色を求めた。白い砂漠を越え、灰色の建物に腰を落とし、漆黒の闇に溶かす。何度そうしただろうか。もうはっきりと思い出せない。そして気づいたんだ。それらは薄々気が付いていた事柄だったけれど、この時、確信をした。僕らは色を喪ったのではない。僕らが色を落としてきたこ
2018年11月29日 23:52
四、 その日、僕は午前中の浄化プログラムを終えると、メトロに乗り込み自宅へと帰っていた。車内に乗り合わせたのは、白銀の杖を電車がごとごと揺れるのに合わせて一定のリズムを刻む老人と僕の二人だけだった。それもそのはずだ。平日の昼間ならば、多くの人が家や仕事場で忽忽と自らの仕事をこなし、衛生ポイントを稼いでいるのが普通なのだから。対して僕はと言えば、仕事場にもいかず、こうして地下鉄に揺られている
2018年11月24日 23:25
三、 バスに揺られること、小一時間。国土をぐるりと取り巻く白い壁の近くまで来ると、中心地と異なり景色は一変する。内壁と外壁の狭間。透明な壁の外にあるもう一つの壁。その存在を確認する度に僕の心は、その外に行ってみたいと密かに願う。いや、きっと僕だけでないだろう。この二重の壁を実際に自分の目で見た者の多くは、そう密かに願ったはずだ。たとえ、一過性の感情だったとしても。 普段中で暮らす人々が意識
2018年11月15日 23:24
二、 今の衛生歴とかつての西暦の一番の大きな違い。それが『太陽』の存在の有無だった。365日、当たり前のように遥か高い宇宙空間から地上の人々を照らし、あまたの信仰の対象となり、常に地球を熱してきた太陽は、衛生歴に入ると、否、あの惨事により地下に潜った人々が再び地上へと戻った時には、すっかりその姿がを隠してしまった。地下から這い出た人々が見た光景は、暗闇と凍てつく寒さに覆われた極寒の荒野だった。
2018年11月8日 01:08
一、 浄化プログラム。別名、ホワイトアウト。それは、十一歳を迎えると同時に受けることが義務付けられている衛生プログラムの総称だった。 過去の過ちにより、この世界は一瞬にして、沢山の尊い大地、資源、そして生命を失った。利己的に、あるいは保守的に、各国の代表と呼ばれていた人々が次々とボタンを押したが故に、沢山の人が傷つき、永遠に失われていった。 ドミノ倒しのように呆気なく崩壊していく世界。
2018年11月3日 18:27
真っ赤な太陽が沈んでいく。それは嘗ての世界では当たり前の夕暮れ時の光景であった。それと共に、今のこの世界では絶対にありえない光景だった。 だから、これはこの世界の夢なのだ。そう結論づけ僕は、前方に立つ彼女の頭めがけて銃口を向けた。『世界が良い方に向かっている、なんて、そんなのただの希望的観測よ。』そうかつて語っていた唇は、固く閉ざされたまま開かれることはなかった。どこか達観し