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2020年2月の記事一覧
モノローグでモノクロームな世界
第九部 第一章
二、
チケットに記載された番号の席にケイが座って程なくして、列車はゆっくりと動きだした。
次第に加速していく列車の窓越しに景色が後ろに流れていく。
やがてそれらは一緒くたに混ざりあっていった。
一緒に乗り込んだはずの二人の乗客は、どうやら違う車輛のようだ。ホームから列車に乗りこんだ姿を最後に、その姿を目に写すことはできなかった。それどころか、この車輌には、彼以外誰も乗客がいな
モノローグでモノクロームな世界
第九部 第一章
一、
ダームシティの地下は、驚くことに色で溢れていた。
見渡す限り電子画面で埋め尽くされた地下空間は、さながら電脳都市という言葉がぴったりと当てはまる。
様々な映像と色を垂れ流す巨大な画面を横目にしながら、ケイは長い長い下りのエスカレーターへと足を乗せた。
厳重な入国審査があると身構えたダームシティの審査は、実に拍子抜けをするほどに、あっけないものだった。リトリから受け取っ
モノローグでモノクロームな世界
第八部 第三章
三、
李鳥にもう一度会えたのならば、なんと声をかければよいのだろうか。
私はもう何百回、何千回と、そのことについて考え続けている。
あの日からずっと。
私が創りだした偽物の彼女達は、私を許してくれた。
それなのに、私の最期の願いを叶えてくれる者はいなかった。
それこそが、私を許すということだというのに。
まるで、それこそが罪であるかのようだった。
私に自分の羽を与え
モノローグでモノクロームな世界
第八部 第三章
二、
地下の生活は私が想像していたよりも快適だった。
無論それは、ミハラが用意してくれた偽のIDと引退したナインヘルツの元高官という偽の肩書があったからに他ならないだろうが。
そして、ダームシティという特別な場所が、私に思わぬ自由を与えた。
この地、ダームシティは、世界の経済面を支えている場所だ。国自体が地下にあるという構造も含め、他の国々とは一線を画していた。ナインヘルツは
モノローグでモノクロームな世界
第八部 第三章
一、
あの舟は今も壁の外で、新天地を求め飛行していることだろう。
私はというと、あれから最後のリトリを起動させ、舟を降りることを決意した。
舟を降りて、何処にいくつもりだ?そう尋ねたミハラには、ダームシティの地下に潜るつもりだと正直に答えた。彼に嘘をついたところで、すぐに見透かされてしまうだろう。
彼は私の回答に二つ質問を寄越した。
そこには、本当に行かなければならないのか。