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2019年3月の記事一覧
モノローグでモノクロームな世界
第二部 第三章
四、
人から感情を奪ったら。
それは本当に人間なのだろうか。
否、そもそも、そんな事は本当に可能なのだろうか。
「いずれ、これはナインヘルツから発表になるが。」
男は私に、トリプル・システムを介し、感情抑制の方法を私に説明した。
君だって知っているだろう。
そもそもこの惨事を引き起こしたのが、人間の愚かな感情だということを。
今回の自殺の騒ぎもそうだ。
全てを奪うわけではな
モノローグでモノクロームな世界 第二部 第三章 三
三、
ドームの外に見える荒廃した大地は、幾らナインヘルツや政府が明日への希望を謳っても、人々に絶望をもたらし続けた。
戻らない現実。戻らない過去。戻らない人々。
声高に発信される希望に満ちた内容よりも、毎日、目にする内容の方が優先されるからだ。顔を見せない太陽も、どんよりと取り巻く暗闇も、人々の顔を次第に曇らせていった。
全ては身勝手な政府により、この事態がもたらされたのだ。中にはそう怒る人
モノローグでモノクロームな世界
第二部 第三章
二、
大気中に大量に放出された浮遊微粒子による影響は大きかった。更に言えば、死の灰による影響を、完全に払拭できているわけではないだろう。太陽が無い、この極寒の地で人間のようなちっぽけな存在が生き残っていくには、外部環境を遮断した小さな隔離空間を作りそこで暮らすことしか選択肢は残されていなかった。
人類は、知恵を総動員して、二重のドームを作ると、荒廃しきった大地から目を背けるよ
モノローグでモノクロームな世界
第二部 第三章
一、
私達がこの地下室を抜け出せたのは、結局、あの事件から半年後のことだった。地下生活の終わりは突如やって来た。暗闇に白い光が訪れた日のことは、一生忘れることはできないだろう。
それは或る一つの世界の終わりと共に、その後に続く絶望的な世界の始まりだった。
一面、冷気が渦巻く極寒の荒れ果てた土地。
幾日も、幾年経っても、姿を見せる事の無い太陽。
そして、その事に順応していく人々。
モノローグでモノクロームな世界 White NOise #5
電車が辿りついたのは、だだっ広いだけが特徴の白昼の海岸だった。
白い泡は繰り返しを繰り返し、彼方へと去っていく。
永遠と永遠の狭間に、僕は立っていた。
彼女が持っていた、珊瑚色の簪を片手に。
昼間の海岸には、僕の外に人影はない。
砂浜が描く牧歌的風景の中を、僕は独り影を伸ばしていく。
嘘と現実の狭間はどこだろうかと考えながら。
「影を売りませんか?」
唐突に降って来たその声に、僕は驚く風情
モノローグでモノクロームな世界 第二部 第二章 三
三、
あの爆発の瞬間、李鳥が自ら私の手を離したのか。
それとも、私が自ら彼女の手を離したのか。
彼女がもし、私の手を離さなければ、彼女の遺体の様子から、今こうして私が無傷で生き残っていることはないだろう。
何故、私一人が助かってしまったのか。
否、何故、あの時、彼女は手を離したのか。
それは、本当に爆撃の衝撃によるものなのだろうか。それとも、どちらかが手を離したのではないだろうか。
そして、そ