モノローグでモノクロームな世界

第二部 第三章 
二、
 大気中に大量に放出された浮遊微粒子による影響は大きかった。更に言えば、死の灰による影響を、完全に払拭できているわけではないだろう。太陽が無い、この極寒の地で人間のようなちっぽけな存在が生き残っていくには、外部環境を遮断した小さな隔離空間を作りそこで暮らすことしか選択肢は残されていなかった。
 人類は、知恵を総動員して、二重のドームを作ると、荒廃しきった大地から目を背けるように、隔離、密閉された生活空間内で疑似的な楽園を築きあげていった。
 水や空気の循環システムは順調に発展、改良を遂げ、衛生レベルを引き上げることに成功した。これにより、人々はウィルスや細菌に犯される心配が減少した。一つ一つの国が利権や主張、利益を求める体制は終わり、世界は協同という路線により、急成長を遂げていった。
 言わば、徹底的な破壊により、膿を出し切ったこの世界は、こうして新しい世界へと生まれ変わっていった。

 だが、そんな頃の事だった。
あちらこちらで、『自殺』という不穏な言葉が囁かれるようになったのは。
それも限定された場所や限定された文化に限ったことではない。
国や民族を関係なく、自ら死を選ぶ人が後を絶たない。
それは、未来を見せ続けなければならないナインヘルツの歴史には、あってはならないものだった。
ナインヘルツは総力を挙げて、自殺者の撲滅に努めた。
トリプル・システムによる感情抑制コントロール。

ーそして、The Beeによる共感覚機能によって。

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