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2018年10月の記事一覧
モノローグでモノクロームな世界 第一部 第一章 四
四、
「ねぇ、この世界で変わらない物、何だか知ってる?」
「変わらない物?そんな物無いよ。君も知っているだろ?
西暦から衛生歴へと変わったあの時、何もかも全て失われたんだから。」
「えぇ、よく知っているわ。私達はあの時からずっと、大切な物を失い続けてきた。でも、今も変わらない物だってある。
ほら、見て。」
そう言いながら夜空を指さしたマドカの横顔は、透きとおるように白く、美しかった。細い指先か
モノローグでモノクロームな世界 第一部 第一章 三
三、
それは僕らが出会って丁度七日目の夜の事だった。
彼女は僕の目前で、教会から飛び降り死んだ。
白い地面に打ち付けられた不自然に歪む体からは、夥しい赤い血が瞬く間に溢れ、白い世界を真っ赤に染め上げていった。
月光に照らされ、白い皮を破り生れ出る赤。
「・・・・・・あ・・・か・・・・・・。」
そうだ、あれが赤だ。
赤、赤、紅、深紅、真紅、赤、RED、Rouge、アカ、朱、赫、あか・・・・
モノローグでモノクロームな世界 第一部 第一章 二
二、
「『色とは光の波長の違い、色相により目の受ける種々の感じ。』」
そう僕に教えてくれたのは、マドカだった。
白く長い髪が揺れる度に、鼻腔をくすぐる甘い香りにのせて、彼女は口癖のように、よくそう口にした。
味気の無い栄養ドリンクを飲みながら。
味気の無いキスを交わしながら。
「ねぇ、ケイ、知ってる?
この世界は昔、沢山の色に溢れていたの。色、知ってるでしょ?
私達が今は文字でしか見ること
モノローグでモノクロームな世界 第一章 一
第一章 はじまりの物語
一、
そこは一面、真っ白な世界だった。
行儀よく立ち並ぶ高層ビルも、無人で走るオートと呼ばれる電気自動車も、重く立ち込める雲も。
形はそれぞれ違えど、何もかも白かった。
空を舞う鳥も、道を駆けていく子犬も、町を行き交う人々の姿も。
・・・・・・僕の服も、肌も、髪も、瞳も、何もかもが白一色だった。
僕はこの町で生まれ育った。この真っ白な世界で。
僕の名前はケイ。今日で