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【読書感想文】イタリア人の不思議『最後はなぜかうまくいくイタリア人』

『最後はなぜかうまくいくイタリア人』

イタリアは何度も他国から攻められても、戦地でパスタを茹でてもずっと先進国の中に居続けている。確かになぜかうまくいっている国だな。

タイトルを見てそんなことを考えていたらどんどんと内容が気になってしまい、今回購入するに至った。


イタリアと関わることがないため内容が自分のためになるかどうかを悩んだところはあったが、多様化する社会を生きる上での考え方も書かれていたため、読了後には満足感があった。


まず最初に私が共感したところを紹介したい。

一言一句馬鹿正直に通訳しようとすると不要なトラブルが起きがちである

作者はイタリア語の通訳者もしているらしく、通訳を始めたばかりの頃の体験も書かれており、上記はその体験から得たものを要約したものである。
私も通訳の仕事に携わったことがあるため、「わかる」としみじみと思った。

依頼者から「自分が言ったことも相手が言ったことも一言一句全て訳して欲しい」と言われるし、その気持ちはよくわかる。

しかし、日本語に存在しないような言葉が使われることもあるし、文化の違いから一言一句訳すことで無駄な争いに発展することもある。

先輩からも「余計なことは省いて訳して良い」と言われて、通訳者としてそれで本当にいいのか悩んだこともあったが、この作者の言葉で心が少し軽くなった気がする。


次に、イタリア人ってそうだったんだ、と思ったところを紹介する。

予定表や打ち合わせ通りに物事が運ぶなどと考えるのはイタリアでは大きな間違いで、そんなのはあくまで努力目標のようなものでしかなく、不足の事態が起こることの方が普通である。
そんなことにいちいち腹を立てること自体がおかしいと言う哲学?である。
(中略)
どっしりと構えて、解決策を見出すことに全力を尽くす方がよほど大切であるということだ。
(中略)
イタリアとの仕事を成功させるには、日本人から見れば一見滑稽に思える彼らの行動様式を理解して、「郷に入れば郷に従え」でイタリア人のやり方に合わせることが大事である。

日本だと予定表や打ち合わせ通りに物事が運ぶことが当たり前なので、そんな根無草のような働き方で本当に成り立っているのか?と思ってしまったが、読み進めていくとまさか本当に成り立っているらしい。

イタリア人は柔軟性が高い人が多いらしく、その部分だけ見れば日本人も見習うべきと思ったが、行き当たりばったりな仕事はストレスが大きそうなので私はイタリアでは仕事を出来そうにない。

ダメもとの厚かましい依頼により物事が動いていく社会では、イタリア人並みに面の皮が厚くないと損をしてしまう。何はともあれトライしないことには、誰も助けてくれないからだ。だから、とりあえず目の前にいる人に何でも頼んでみようとする。それがダメなら次を探せばいいや、というわけだ。

この精神すごくない?と読みながらずっと思っていた。

友人Aの知り合いであるBが経営するレストランに行きたいから友人Aに
「Bのレストランに今度行くから優遇してくれるように言っといてくれ」
なんて日本人にはハードルが高すぎて考えついたとしても実行はできない。

それでも困った時はお互い様精神のイタリアではこのような遠い関係の人への厚かましいお願いの成功率が高いというのだから、驚くばかりである。

理想にこだわって、高望みをして、結局は人生を楽しめず、不満ばかりが溜まっていくよりは、小さなことに満足して、少しでも人生を楽しむようにしたほうが良いに決まっている。どんな状況でもそれなりに人生を楽しむ。ある意味イタリア人はその天才である。

この精神は見習いたいと本気で思った。
人間良い方に慣れるのは早い上に、日本人の完璧主義はとどまることを知らない。
けれど高望みし続けるのはキリがないのでシャトルランを走っているように非常に疲れる。
より良いサービス、より良い商品、より安い価格…
多少悪かろうがお互い様だと許容できる社会は生きやすかろう。
今ある幸せを噛み締めることができれば息切れしにくい生活を送れるのかもしれないと思った次第である。

身近なようでまったく異なる文化の2つの国を頻繁に往復していると、どちらがいいとか悪いとか、どちらが好きとか嫌いとかの議論がいかに不毛であるかがよくわかる。それぞれの国が、長い時間をかけて、それぞれのルールを築き上げてきたのだ。
重要なのは、それをよく理解することである。そうすれば、意味のない誤解や不愉快な思いを避けることができる。そのうえでその国が好きになれなければ、無理に付き合うことはない。人間と同じである。フィーリングが合わない人と無理に付き合う必要はないだろう。

どの町にもイタリアンレストランがあったり、ディズニーシーに行けばヴェネツィアン・ゴンドラがあったり、ナポリタンという料理を作り出してみたり、日本人にとってイタリアは馴染み深い国である。けれど国が違えば文化も違う。合う合わないは当然ある。

もちろんイタリア以外の国でも合う合わないはある。

日本の文化や考え方を振りかざして「あそこの国の人は〜」と批判するよりも、「こういう文化があるからあんな行動を取ってたんだ」と理解できた方がよっぽど良い。
理解して受け入れられないなら関わらなければ良いのだ、と再認識できる一文である。


おそらくどの国でもこの作者が書くように、文化の違いや性格の違い、考えの違いなどは存在する。
もちろんニュースを見ていて、私自身「この国の人はなんでこんなことするのかな」と気を揉んだりすることは多い。
けれども、この作者のようにトライ&エラーを繰り返し、少しずつでも関わり方を模索して行けたらより良い文化交流ができるのではないかと考えた。

この作品はイタリア人に特化したものであるが、異文化交流をする上で必要な心構えが書かれていたり、文体が軽いので少し疲れているときに息抜きで読んでみると面白いのではないだろうか。

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