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宇佐見りんデビュー作『かか』がブッ刺さった

 本当にタイトルの通りである。

 まずこの物語は、浪人生である”うーちゃん”が弟のみっくんに話しかける形で進んでいく。
 幼い頃金魚を飼っていたという”うーちゃん”の回想で始まるが、実はその金魚は同居している従姉妹の経血が風呂に浮かんだものだった。この時点で衝撃を受けた。そんな書き出しがあるのか! と脱帽した。

 母親をかかと呼んでいること、かかは最近アル中で暴れること。家の中では様々なかか弁が使われていること、そして何よりうーちゃんが今から一人旅に出ることが明かされる。しかし、この段落はそれらの情報が吹っ飛んでしまいそうなほど強烈な文章によって締めくくられる。

  みっくん、うーちゃんはね、かかを産みたかった。かかをにんしんした  かったんよ。

 え? って声が出た。かかから産まれたうーちゃんが、かかを産むってどういうこと?
 でも次の瞬間に、それは私も持ったことのある感情だと思い出して胸が締め付けられた。大好きな母親と、変わってしまった母親と、別の形で出会いなおしたいだけなんだよね。気が付くと私はみっくんじゃなくてうーちゃんになっていた。

 だいぶ話は飛んで次に刺さった箇所を引用させてもらう。

  うまれるということは、ひとりの血に濡れた女の股からうまれおちるということは、ひとりの処女を傷つけるということなのでした。

 この行を読んだとき、思わず泣いてしまった。心当たりがありすぎたのだ。母を父と結ばせてしまったのは、母という一人の女の人生を狂わせたのは、一番初めに産道を通り抜けてしまった私だということをずっと考えていたから。

 しかしうーちゃんの自立は、思いもよらぬ形で訪れる。かかが子宮を全摘出することになったのだ。自分とかかを縛り付けていた象徴的な子宮が、自分が入っていた子宮が、かかにはもう付いていない。
 私にとって、すべての女の子に読んで欲しい本だった。


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