山口倫太郎 Ringrintaro
ボクシングの技術、戦術、トレーニング法や指導法などを紹介、解説します。 タイトルはベルリンのボクシングジムBoxtempelから。
日々思うことをポツポツ書いていきます。
観た映画、読んだ本について書いていく予定です。※以前に書いた映画評もここに移します。
近いうちにエンソフ http://www.en-soph.org/ で東南アジア旅行記を書こうと思っています。ここには、今回の旅も含めてこれまでの旅についての思い出と雑感を書きたいと思っています。
試合前、僕はQuoraで以下のように書きました。元プロボクサーとして「もしメイウェザーが負けたらどうしよう」というような不安がなかったわけではありませんが、その可能性がとても低いことは誰でも分かることです。 そして観戦後には「メイウェザー衰えたなあ」という感想を持ちました。 衰えについては最近のドバイでのドンムーア戦を観ても分かってはいたものの、ここまで衰えたかと悲しくなりましたね。今回の朝倉戦はメイウェザーの試合で僕が知る限りは最も醜い試合だったと思います。 勿論、4
「俺って昔本当にボクサーだったんだなあ」 と、しみじみと思った。 勿論、人生で最も情熱を傾けたのがボクシングで、そこに嘘などは無い筈だ。 とは言え、いつ頃からなのかは覚えていないが、他人にボクサーだったと話す時、事情があってプロキャリアの全てが海外での試合だったことを話す時、そこに拭い難い気恥ずかしさを感じてしまうようになった。 僕は2週間程前からスポーツインストラクターを養成する職業訓練学校に通っている。 そこでも当たり前に自己紹介その他で過去にボクサーだったと話し、聞
ーーそこに居ない人。 なくなってしまったぬいぐるみのことを考えていて、連想的に、ある時期によく見ていて、そして現在はパッタリと見なくなってしまったある人のことを思い出した。 140センチあるかないかの小柄な人だったので、その人のことは(失礼な表現だとは思うものの)「小男」と呼ばせて貰おう。 僕が隣町にあった日雇いの人夫出しで働いていた時期に、小男は同じく通いの人夫として毎日通っていた。 小男のことは人夫出しをやめてから長く見ることはなかったものの、十年振りくらいに見掛け
ーーそこに無いモノ 何かしら気にかかったことがあり、それについて何か書こうと思っていたもののいつの間にか忘れてしまってどうしても思い出せず「何か書こうと思ったのに」ということだけ覚えている、ということがたまにある。 「忘れてしまうくらいだから大したことではないのだろう」と気にしないことが殆どだが、中には「短編小説の一本でも書けるものだったかも知れない」などと気になって仕方がないこともある。 とはいえ、今回は発掘不可能のネタだったわけではなく、毎日通る近所のある場所に直接
つい先日、ジョシュアオッペンハイマー監督のドキュメンタリー映画『アクトオブキリング』、『ルックオブサイレンス』を見た。 両作品はともにインドネシアで1965年に起こった「9月30日事件」と呼ばれるクーデター未遂事件の渦中で起こった民間人の虐殺事件を題材にしている。その点には変わりないものの、『アクトオブキリング』は加害者視点から描かれており、『ルックオブサイレンス』は逆に被害者視点から描かれているという点で見る者に全く異なる印象を与える。 『アクトオブキリング』が2012
子供の頃から45歳の現在に至るまで多くの漫画を読んできた。 印象的に残る漫画、泣かされた漫画、こんな発想はなかったという漫画、作者の思想に共感した漫画などなど、思い出に残る漫画はいくつでも挙げることが出来る。 中でも「これまで読んだ中で最高の漫画作品かも知れない」と思わされたのが新井英樹『キーチ!!』だ。 Story 山で生まれた父と海で生まれ育った母のもとに生まれた染谷喜一は3歳にして1人で電車に乗って遠出する行動力の持ち主だが、あまり喋らず泣きもせず、意思表示と感情表
自戒を込めて書こう。 僕は、昔は2ちゃんねるから懐かしきmixi、Facebookなど、ウェブ上の様々なスペースで様々な「議論」をしてきた。 ここであえて「議論」とカッコで括ったのは、そう呼ぶに相応しくない仕様もないやり取りに終始したことも数えきれないくらいあったと考えているからだ。 とはいえ、それらの「議論」が全て下らないものだったと考えているわけではない。中には自分の考えを改める経験になったものや、「こういう考え方もあるのか」と目を丸くしたことも、意識することのなかった
人は産まれて、まず母親をそれと認識するだろうか。 続いて父親、兄弟姉妹。 そして近所の人々を認識し、同年代の幼なじみが出来て、その後幼稚園、保育園へと進んで両親以外に自分の世話をしてくれる大人を認識し、同じ歳で同程度の認識能力を持つ子供たちを様々な性格をもった写し鏡として認識する。 小学生になるともっと多くの子供達と接するようになり、中学生になると小学生の頃では違った学区の子供達と出会い、さらに高校、大学、或いは社会人となって……。 ようするに、人は、子供時代のある時期に少
コロナ禍の影響でFacebookも大騒ぎ。 僕のタイムラインにも当然のように各ニュースサイトによる関連の記事が並んでいる。 で、どのような内容の記事かは覚えていないし、そもそもその記事を読んだかどうかも覚えてない。しかしそれにも関わらず、その記事のコメント欄にあったある書き込みだけは覚えている。 イラッとしたからだ。 正しい文言ではないと思うが、それは「これだけの死者が出ているにも関わらず経済について心配している人は、命よりも金が大事なんでしょうね!」という内容の、無垢な
はじめに『日の名残り』は、戦後のイギリスを舞台にしたカズオイシグロの小説で、著者の出世作であると共に、この日系ノーベル賞作家の最も愛された作品と言って良いだろう。 この小説の楽しみは幾つもあるが、中でもストーリーの主軸となるものは二つある。 その一つがスティーブンスとかつて彼の下で働いていた女中頭のミス(ミセス)ケントンが互いに好意を持ちながらすれ違いを続けるラブストーリーで、それをもう一つの主軸である、スティーブンスが主人であるダーリントン卿に仕える中で垣間見た、第一次世
しばらく住んでいた広島をはなれ福岡の実家に戻ると、NPO法人「かものはし」からーー2018年年次報告書ーーと書かれた冊子が届いていた。 雨に打たれたのか、それは裏山、或いは橋の下に捨てられたエロ本のようによれていたが、たった今「法案の頓挫から生まれた『対話』という一縷の希望」というレポートを読んで、この団体に(毎月千円だけだが)数年間寄付してきて本当良かったなあと思った。 この団体を知ったのは確かFacebookの広告ページだっと思う。 「子供が売られない社会を作る」とい
メディアの帝王、FOXニュースを率いるロジャーエイルズが女性職員にセクハラで告発された事件を基にした映画です。 メイク担当の日系アメリカ人カズ・ヒロ氏の二度目のオスカー受賞でも話題になりましたね。 この映画で描かれていることがどれだけ事実に忠実であるのかは分かりません。 ただし、ここで描かれている「セクハラの構造」は非常にリアルで、別のジェンダー関連問題に当てはめてみても分かり易いです。 僕の感想は「やはりアメリカでもこういった構造があるんだな」というものでした。 まず
(【2ー二人の小説家】から続く) その後僕は卒業試験(卒論の口頭試問)にも合格し、無事卒業を決めた。 青木さんに結果を話すと「A判定だった?凄いね!でもあれはすごく良かったもの」と言って満面の笑みで喜んでくれて「今度お祝いに何か食べに行こうね!」と誘ってくれた。 7年に渡る苦闘の末、やっとのことで卒業した。 卒業出来たことは嬉しかったし、誇らしかった。 ボクシングに加え、胸を張って「頑張った」と思える2つ目のものを、ちゃんと結果を伴って終える事が出来た。 大学に入って良
(【1ー現場にて】から続く) それからというもの、駅近くの同じ現場に派遣されることが多かったこともあり、時間を見付けては青木さんとよく話をするようになった。 話すきっかけとなったのは勿論「命の恩人だ!」と言われた僕の指導の一件からだが、「小説家を目指している」という青木さんに僕自身も小説家を目指していると話したことも大きかっただろう。 その時青木さんは、目を輝かせて「文通しましょう!」と笑った。 勿論、同じ現場と言ってもそれぞれ持ち場があるわけで、話せる時間はそれ程長くは
僕には青木さんという随分と歳上の友人がいる。 青木さんの夢に向かうその絶え間ない努力には頭が下がるし、飽くことのない向上心や枯れることのない好奇心には会う度に驚かされる。そんな青木さんをただ「友人」と呼ぶのは失礼な気もするので「畏友」と呼ぶことにしたい。 SNSなどでは青木さんについて度々話題にしているのだが、以前からそういった仲間内に向けた短い書き込みではなく、まとまったものを書きたいと思っていた。 そういうわけで、せっかくアカウントも作ったのだし、不特定多数が目にする可
小学校の種学旅行以来で宮島を観光してきた。 目に掛かるものがある度に写真を撮った。 それらの全てはiPhoneで僕が撮ったものだから、それなりのカメラでそれなりの人が撮ればより良い写真になったに違いないが、とても印象的な情景がそのままにカメラに収まることがあった。 この、メジロの亡骸を足下に見つけた時、その美しさに目を奪われた。そして、その時の印象はうまくカメラに収まり、この写真をみる度に思い起こされる。 僕は神も仏も信じない。 あの世も信じなければ、霊魂の類も信じない。