「…大丈夫。きみはとっても小さくて、小さな世界を生きている。」
不安や悩みで胸がいっぱいになるとき。
決まって私は夜空を見上げる。
部活や塾で疲れて、ひとり真っ暗な夜を歩いた高校時代の帰り道も。
「家が遠いから」と飲み会を抜けて、皆の楽しむ姿を羨む帰り道も。
いつも、夜空を見上げてきた。
***
「お父さんも私も、あなたからコロナを移されたら仕事ができなくなるの。お金は出すから、大人数の飲み会も都内のイベントも我慢して。お願い。」
新型コロナ感染拡大による自粛要請が解除され、
皆がGo to トラベルなどに行っている間も、
医療や接客業に携わる親からの自粛要請は続いた。
大人数のサークルの飲み会も断り、大好きなバイトの職場にも遠くて長らく行っていない。大学の授業もインターンもすべてオンラインになった。
友達からの遊びの誘いも次第に来なくなって。
自分から誘っていたけど、それも申し訳なくなってきて。
返信を返すのも、おっくうになってきて。
自分の周りにいた人たちが離れていき、
自分が小さくなっていく感じがしていた。
いつも誰かに必要とされていないと、
自分が保てない。大きな自分でいたい。
このまま小さくなって、
いつか消えてしまいそうだから…
すっかり小さくなった自分は一軒家の部屋の中で、スマートフォンとPCを手に、大きな自分になれるよう頑張ることにした。
インターネットで人脈を必死に広げ、
長期インターンやゼミのプロジェクトにも挑戦した。
画面越しに、喜び、怒り、哀しみ、楽しんだ。
……でも、寂しさは増すばかりで。
大きくなんてなれないどころか、小さくなっていく自分がいた。
今日においては親に説教を3、4回受け、
家に居場所もなかった。
いつもに増して寂しくて、胸が苦しかった。
だから今夜は特別。
スリッパをはいたまま、思い切って部屋のベランダから夜空を見上げることにした。
***
満点の星空を期待していたけれども、
今夜は雲が多かった。
目に映ったのは、
たったひとつの小さな星だった。
見えるか見えないか分からないぐらい、
本当にちっぽけな星。
でもこれが、
ちっぽけであればあるほどラッキーなのである。
そんな星に、目をこすりながら私は語りかける。
「どんなに頑張っても、大きくなれないの。ひとりぼっちなの。大きなことを言う大人や、大きな社会や、広い世界が怖いの。
ねえ、こんなに小さなきみだったら、分かってくれるよね?」
すると、星は軽く笑ってみせた。
私がちょっと悲しそうな目をすると、
最後に彼は静かに優しく微笑んだ。
ああ。私も大人も社会も世界も。
どんなに頑張っても小さいんだな。
安心できる諦めというか、
身体と心がふわっと軽くなるような感覚がする。
この瞬間が、
いつもわたしの心を救ってくれるのである。
***
グローバル?
インターネットで広がる社会に世界?
みんな大きなことを言って。
頑張って身体を大きくして。
ただでさえ小さな世界だっていうのに、
ますます窮屈になってしまうじゃないか。
自分を無理に大きくしてしまうのは良くない。
けれども限界を超えることが素晴らしいとされるこの世の中。
自分の力を大きくしようとする人は背中をひたすら押されて、
大きな自分を目指している間に
等身大の小さな自分を忘れる。
そんな風潮の中、
限界が見えた自分を肯定できず、
自ら命を落とす人も沢山いる。
だからこそ、
悩みや不安に押しつぶされそうになった時には、
一度立ち止まって星空を見上げてほしい。
そして最後まで読んでくれたあなたに、
何よりも伝えたいこと。
それは。
無理して大きくならなくていい。
小さな自分を、どうか忘れないであげて。
***
こんばんは、miinaです。
ちょっと今回は初めての物語風な文章を書いてみましたが、
なかなか独特なワールド全開で少し恥ずかしい気もして、手に汗ちょっと握ってます。(笑)
この文章を書いたことで私自身心が軽くなったので、
読んでくださった皆さんの心もふわっと軽くなったら嬉しいです。
それではまた、
次回お会いできるのを楽しみにしています。
お体ご自愛下さい。
おやすみなさい🌠