コツコツを唯一無二にーヴァニラウェアという異常で偉大なゲーム会社ー
ヴァニラウェアという会社をご存じだろうか?
ゲーム業界きっての職人集団で、直近では2019年に『十三機兵防衛圏』をつくって多方面で話題になった。
それからも2023年には初となるオーケストラコンサートを開催して、翌年にはその再演と最新作『ユニコーンオーバーロード』を世に送り出し、この記事を書いている翌々月……つまり2025年3月にも三度目のオケコンを控える等、いまノリにノっているゲーム会社である。
正直なところ、ヴァニラウェアは最近まで「知る人ぞ知る」といった存在だったように思う。
マニアがほくそ笑んで「ふひひ、おれはすンごいゲームを知ってるんだぜ」と、そんな存在だった(もちろん、私も例外ではないのだけど)。
そうした「彼ら」の転機は、やはり冒頭にも挙げた通り『十三機兵防衛圏』だろう。
初動こそ緩やかに思えたが、その正気の沙汰ではないクオリティを目の当たりにしたユーザーにより口コミでじわじわと評判が広がっていき、最終的には「十三機兵?あれってステマじゃないの?」と疑われるほどの爆発力で各界の著名人を含めて魅了した。
さて、ヴァニラウェアの魅力といえば、唯一無二のデザインワークだ。そしてその中心にいるのは、社長の神谷盛治である。
かの有名なカプコンに新卒で入社した経歴も持つ神谷のイラストは、西洋画のごとく繊細なタッチや神話に影響を受けた世界観を特徴とする。
毎年、X(旧Twitter)で年賀絵を発表しているのだが、これがまた恐ろしいクオリティで、そこから新作の展望に想像を巡らすファンが後を絶たない。
さらに彼が怪物じみているのは、イラストだけでなくシナリオの執筆も担うということ。その完成度が尋常ではないということだ。
私は幼いころに漫画家に憧れたが、絵心はないと早々に諦めて自身の文章力にのみ頼って生きてきたので、「天は二物を与えるのか……」と羨ましくもあったり。
そうした才能が遺憾なく発揮されたのが『十三機兵防衛圏』なのだが、私がこの会社に出会ったきっかけとなる『オーディンスフィア』にも少しばかり触れさせていただきたい。
『オーディンスフィア』は北欧神話と指輪物語をベースに、手描きの絵本のような幻想的な絵柄と、演劇のような台詞まわしや演出で味つけをしている。
私は劇作家・演出家・俳優として活動していることもあり、この作品が刺さりに刺さった。運命の一作といっても過言ではないと思う。
大学時代まではゲームを遊ぶ時間がほぼなかったため、正確にはリメイク作の『オーディンスフィア レイヴスラシル』からの入門となったわけだけれど、その先は「推し会社」のトップとして私の中に君臨し、それまでは「にわか」だったゲームにも随分と詳しくなった。
一度も行ったことがなかったコラボカフェにも行ったし、こういう類のオーケストラコンサートに参加したのも初めて。
たくさんの「初めて」を経験させてもらった。ほんとうに感謝しています。
惜しむらくは、ファンの方々とお友達になったことがないくらいかな。
それでも、十二分に楽しい思いを、そして多くの刺激を与えてもらってきました。
とにかく、同じ創作者から見て、派手なパフォーマンスをするわけでもなく大きな後ろ盾があるわけでもない会社が、コツコツと地道な努力を続けて大衆に認められていく過程には非常に勇気づけられるものがありました。
これからも、唯一無二の会社「ヴァニラウェア」を、ずっとずっと応援しています。だいすき!